ダイエット中に便秘になるのはなぜか。宿便という言葉の話も
「ダイエットを始めてから、便秘がひどくて」
日吉の体験トレーニングで、実際にうかがった言葉です。このあとに続くのは、たいてい「体重が落ちないのは、これのせいでしょうか」でした。この記事では、便秘とダイエットの関係を、今回実際に開いて確認できた研究だけで整理します。便秘の定義と日本での頻度、食物繊維、水分、減量中の食事、プロバイオティクス、運動、そして「便秘で体重計は何kg動くのか」までを扱います。
先に、やらないことを書いておきます。腹痛や出血、急に始まった排便習慣の変化は扱いません。受診していただく領域です。便秘と体重の因果関係も、断定できる根拠は見つかりませんでした。ここは、断定しないほうが誠実な領域です。便秘は努力不足で起きるものではないので、「頑張りが足りない」という話にはしません。
まず、便秘の定義を揃えます
国際的な診断基準であるRome IVでは、機能性便秘は次の6項目のうち2つ以上があてはまる状態です。排便の4分の1超で、いきみ・硬い便(ブリストル便形状スケール1〜2)・残便感・詰まった感じ・用手的な介助のいずれかがあること(各1項目)、そして自発的な排便が週3回未満。くわえて下剤なしに軟便が出ることはまれで、過敏性腸症候群の基準を満たさないこと。期間は6か月以上前からの症状と、直近3か月です。
大事なのは、「毎日出ないこと」だけでは定義に入らない点です。週3回未満は6項目のうちの1つにすぎません。逆に毎日出ていても、いきみと残便感が4分の1を超えれば定義上は便秘にあたります。
日本ではどのくらいの人が訴えているか
厚生労働省の国民生活基礎調査(令和4年)に基づく報告では、便秘を訴える人の割合は男性2.8%、女性4.4%で、女性のほうが高い値でした。50歳以下では女性の比率が目立って高く、加齢とともに男性の比率が上がり、70歳以降で男女差が消える傾向が報告されています。20代から40代の女性が便秘を訴えやすいのは、その人固有の問題というより、統計に出ている分布です。
便は何グラムあるのか
「何日も出ていないから体重が増えている気がする」という相談はよくあります。ここには実測値があります。イギリスの健康な成人220人の研究(Cummings ほか, Gastroenterology, 1992)では、1日の便重量の中央値は106gでした。
排便が正常な人の系統的レビュー(Balk ほか, AHRQ, 2025)では、食物繊維が平均18g/日の条件で便重量の平均は166g/日。食物繊維を1g/日増やすと便重量が1.76g/日増える(95%信用区間1.58〜1.94)という関係も示されています。ただし頭打ちがあり、追加量が25g/日を超えると1gあたり0.8gまで効率が落ちます。
3日分たまっても300〜500g程度です。便が2kg、3kgとたまって体重計を押し上げている、という説明を裏づける研究は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。「宿便が何キロも腸にこびりついている」という話も同様です。体重が1日で1〜2kg動くのは、便よりも水分の影響が大きいと考えるほうが実測値と整合します。
食物繊維。効きますが、条件があります
慢性便秘の成人を対象にした食物繊維サプリメントのメタ解析(van der Schoot ほか, American Journal of Clinical Nutrition, 2022)は16件のRCT・1,251人を統合しました。食物繊維群では473人中311人(66%)が改善し、対照群は329人中134人(41%)(リスク比1.48、95%信頼区間1.17〜1.88)。排便回数も増えています(標準化平均差0.72、0.36〜1.08)。
ただし条件があります。効果が見られたのは10g/日を超える量を4週間以上続けた場合で、種類ではサイリウム(オオバコ)とペクチンで有意でした。すべての食物繊維が同じように効く結果ではありません。また食物繊維群では対照群よりお腹の張りが多く報告されています。
日本人の摂取量と、2025年版の目標量
日本人の食事摂取基準2025年版では、成人女性の目標量は18〜74歳で18g/日以上、75歳以上で17g/日以上。男性は30〜64歳で22g/日以上などとされています。背景には、測定法がプロスキー変法からAOAC.2011.25法に変わり、成分値が上がったことがあります。
一方の実際の摂取量です。厚生労働省の情報サイトでは、令和6年国民健康・栄養調査をもとに20歳以上の平均は1日18.1gとされています。正直に書きますが、これは女性の目標量18gとほぼ同じ水準で、「日本人は全員が大幅に不足」と単純には言えない数字です。ただし平均値なので、個人がどこにいるかは別の話です。そして上のメタ解析が効果を確認したのは、便秘のある人に10g/日を超えて追加した条件でした。すでに18g摂れている人が「もう少し野菜を増やす」程度で同じ効果を得られるかは、確認できませんでした。
水分。効くのは、足りていないときです
健康な成人15人の研究(Chung ほか, Journal of Clinical Gastroenterology, 1999)では、水またはスポーツドリンクを1〜2L上乗せしたところ、尿量は有意に増えましたが、便の量には有意な変化がありませんでした。もともと足りている人が増やしても、便は増えなかった、という結果です。
ただし水の種類は別でした。食品・飲料・食事法のメタ解析(van der Schoot ほか, Alimentary Pharmacology & Therapeutics, 2023/23件・1,714人)では、539人のデータで高ミネラル水は低ミネラル水より治療反応が高い(リスク比1.47)と報告されています。量ではなくミネラルの話です。同じ解析では、キウイフルーツで排便回数が週+0.36回(192人、0.24〜0.48)、ライ麦パンが白パンより週+0.43回(48人)。増え方は、正直、控えめです。
減量中に便秘が起きやすくなるか
ここははっきりした数字があります。過体重・脂質異常のある成人120人を低炭水化物ケトン食と低脂肪食に割りつけたRCT(Yancy ほか, Annals of Internal Medicine, 2004)では、便秘を報告した割合が低炭水化物群68%、低脂肪群35%でした(p<0.001)。
理屈とも整合します。便重量は食物繊維1gあたり1.76gという関係にありました。主食を減らせば穀物由来の繊維が減り、全体量を減らせば繊維の総量も減ります。減量中に排便回数が落ちるのは、多くの場合、体に異常が起きたのではなく、入力が減った結果です。ただし「エネルギー制限そのもの」が便秘を何%増やすかという数字は、今回調べた範囲では確認できませんでした。確認できたのは低炭水化物食での68%対35%までです。
プロバイオティクス・発酵食品
慢性便秘の成人のメタ解析(van der Schoot ほか, Clinical Nutrition, 2022)は、プロバイオティクスのRCT30件とシンバイオティクス4件を統合しました。治療反応はプロバイオティクス群647人中369人(57%)、対照群567人中252人(44%)、リスク比1.28(1.07〜1.52)。排便回数も増えました(標準化平均差0.71、0.37〜1.04)。
ただし菌株で結果が割れています。Bifidobacterium lactisでは有効でしたが、複数菌株の混合、Bacillus coagulans、Lactobacillus casei Shirotaでは有意な効果が確認されませんでした。シンバイオティクスは著者ら自身が「推奨するには証拠が不十分」としています。「ヨーグルトを食べれば便秘が治る」と一般化できる結果ではありません。
運動
便秘のある人の運動療法のメタ解析(Gao ほか, Scandinavian Journal of Gastroenterology, 2019)は9件のRCT・680人を統合し、運動全体でリスク比1.97(1.19〜3.27)、有酸素運動2.42、ウォーキング1.98と報告しました。ただし研究間のばらつきが非常に大きく(I²=91.3%)、そのまま鵜呑みにできる精度ではありません。
観察研究はサンプルが大きいです。コホート13件・119,426人の系統的レビュー(Cui ほか, Journal of Global Health, 2024)では、身体活動量が高い群は低い群より便秘のリスクが低く(リスク比0.69、0.58〜0.83)、中程度でも0.85でした。ただし因果の証明ではありません。
便秘と体重、そして腸内細菌
ここは、断定しないほうが誠実な領域です。メンデルランダム化と14件・43,488人のメタ解析(Zhou ほか, Frontiers in Nutrition, 2024)では、遺伝的に予測されたBMIが便秘リスクと関連する(オッズ比1.138、1.029〜1.260)一方、メタ解析では成人で肥満と便秘の関連は有意ではありませんでした(リスク比1.000、0.786〜1.303)。有意だったのは小児(1.407)です。便秘が肥満を引き起こす方向の関連も確認されていません。
正直に書きます。結果の方向がそろっていません。「便秘だから太る」を支持する結果は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。腸内細菌についても、便秘の人とそうでない人で構成が違うという報告はありますが、それが原因か結果かを決められる証拠は確認できませんでした。
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よくある質問
便秘で体重が2kg増えることはありますか
今回調べた範囲では、それを裏づける研究は見つかりませんでした。健康な成人220人の1日の便重量の中央値は106gで、繊維18g/日の条件でも平均166g/日です。3日分でも300〜500g程度にとどまります。1〜2kgの日内変動は、便よりも水分の影響が大きいと考えるほうが実測値と整合します。
水をたくさん飲めば便秘は改善しますか
もともと足りている方では、期待しにくいと考えられます。健康な成人15人に水を1〜2L上乗せした研究では、尿量は増えましたが便量に有意な変化はありませんでした。ただし高ミネラル水は低ミネラル水より治療反応が高く(リスク比1.47)、これは量ではなくミネラルの話です。
ダイエット中に排便回数が減るのは異常ですか
異常とは限りません。便重量は食物繊維1gあたり1.76g増える関係にあり、食事量が減れば便の量も減ります。低炭水化物食のRCTでは便秘の報告が68%対35%と約2倍でした。ただし腹痛や出血、急な排便習慣の変化がある場合は、自己判断せず受診をお願いしています。
参考:日吉のCLEAN.の場合
CLEAN.は日吉駅の西口から徒歩3分、女性専用・完全個室のパーソナルジムです。男性は法人契約と、既存会員様からのご紹介のみお受けしています。ウェア・シューズ・タオル・水はすべて無料で貸し出すので、手ぶらで通えます。
月額プランには、毎日のLINE食事指導と、10日ごとのフィードバックが含まれます。この記事の数字のうち日々の記録から確認できるのは、食物繊維の摂取量と食事の総量です。減量中に排便回数が落ちたとき、それが食事量の変化で説明のつくことなのかを、一緒に見ていきます。
料金は月4回コースが42,000円(税込46,200円)、月8回コースが72,000円(税込79,200円)。24回分の回数券は211,200円(税込232,320円・有効期限180日)で、LINEの食事指導は含まれません。入会金は30,000円(税込33,000円)、これ以外の追加料金はありません。詳しくは3つのプランの違いと料金・プランのページをご覧ください。
体調や痛みに関わることは、まず受診をお願いしています。腹痛や出血、急な排便習慣の変化は、トレーニングや食事で様子を見る対象ではありません。
まとめ
便秘の定義はRome IVで6項目のうち2つ以上、期間は6か月以上前からの症状と直近3か月です。「毎日出ないこと」だけでは定義に入りません。日本では令和4年の調査で女性4.4%、男性2.8%が便秘を訴え、50歳以下では女性に偏っています。
体重計の話は実測値で片がつきます。1日の便重量の中央値は220人で106g、繊維18g/日の条件で平均166g/日。食物繊維1gにつき便は1.76g増えます。減量で食事量が減れば便も減るという関係は、数字で説明がつきます。低炭水化物食のRCTでは便秘の報告が68%対35%でした。
対策として確認できた数字は、食物繊維が10g/日超・4週間以上でリスク比1.48、プロバイオティクスが1.28(菌株による)、運動療法が1.97(ばらつき大)、高ミネラル水が1.47、キウイフルーツが週+0.36回。水の量を増やすこと自体は、健康な成人では便量を変えませんでした。
そして便秘と体重の因果関係は、断定できる証拠が見つかりませんでした。成人では肥満と便秘の関連は有意ではなく(リスク比1.000)、便秘が肥満を招く方向も確認されていません。ここは、断定しないほうが誠実な領域です。
日吉に通うのが難しい方には、オンラインもご用意しています。横浜のオンラインパーソナルトレーニング・オンライン食事指導(CLEAN.Online)でも、同じ考え方で食事と運動の記録を一緒に見ていきます。
- CLEAN.
出典
Rome Foundation, Rome IV診断基準(機能性便秘), 2016/小笠原尚高, 現代医学(愛知県医師会)71巻1号, 2024(令和4年 国民生活基礎調査に基づく記載)/Cummings JH, Bingham SA, Heaton KW, Eastwood MA, Gastroenterology, 1992/Balk EM ほか, Fiber Intake and Laxation in People With Normal Bowel Function: Systematic Review, Agency for Healthcare Research and Quality (AHRQ), 2025/van der Schoot A, Drysdale C, Whelan K, Dimidi E, The American Journal of Clinical Nutrition, 2022/van der Schoot A, Helander C, Whelan K, Dimidi E, Clinical Nutrition 41(12):2759-2777, 2022/van der Schoot A, Katsirma Z, Whelan K, Dimidi E, Alimentary Pharmacology & Therapeutics, 2023/Chung BD, Parekh U, Sellin JH, Journal of Clinical Gastroenterology, 1999/Yancy WS Jr, Olsen MK, Guyton JR, Bakst RP, Westman EC, Annals of Internal Medicine 140(10), 2004/Gao R, Tao Y, Zhou C ほか, Scandinavian Journal of Gastroenterology 54(2), 2019/Cui J, Xie F, Yue H ほか, Journal of Global Health 14:04197, 2024/Zhou, Sun, Zhang, Frontiers in Nutrition, 2024/厚生労働省, 日本人の食事摂取基準(2025年版)策定検討会報告書, 2024/厚生労働省 e-ヘルスネット「食物繊維」(令和6年 国民健康・栄養調査に基づく記載)