冷え性だと代謝が悪いのか。体を温めれば痩せるのか
「冷え性だから代謝が悪いんですよね」
日吉の体験トレーニングで、実際にうかがった言葉です。冷えと代謝が一本の線でつながっているという感覚は、それだけ広く共有されています。この記事では、その線が本当につながっているのかを、実際に開いて確認できた研究だけで検証します。冷え症がどれくらい多いのか、冷えているのは体のどこなのか、体温と代謝の関係はどこまで測られているのか、減量中に手足が冷えるのはなぜか、冷えの背後に病気がある場合をどう見分けるか。この順に進みます。
先に一つだけ書いておきます。調べた範囲で「体を温めると痩せる」方向の証拠は見つかりませんでした。見つかったのは逆向きの研究です。ただし「冷えを放っておいていい」という意味ではありません。痩せるための温めと、快適に過ごすための温めと、受診が必要な冷えは、分けて考える必要があります。
冷え症は、どれくらい多いのか
日本人女性238人を対象にした疫学調査(Tsuboi S ほか, International Journal of Women's Health, 2019)では、手足の冷えを軽度に自覚する人が49.6%、重度に自覚する人が35.3%でした。合わせると8割を超えます。この調査では冷えのある人で腰痛のオッズ比が4.91、聞こえにくさのオッズ比が4.84と報告されていますが、これは関連であって因果ではありません。
日本人女性341人のウェブ調査(Mandai N ほか, Cureus, 2026)では、冷えなし162人、軽度114人、重度65人でした。軽度と重度を分けた要因は、居室の室温が18℃未満である割合(重度50.8%、軽度32.5%)と、現在食事制限をしている割合(重度41.5%、軽度28.9%)です。後者には、あとでもう一度触れます。
冷えているのは「芯」ではなく「手足の先」です
若年女性20人(冷え症12人、非冷え症8人)を晩秋から冬に測定した研究(Ogata M ほか, 日本看護技術学会誌, 2017)では、冷え症群は副交感神経活動の指標が低く、交感神経活動の指標が高く、安静時でも末梢の血流が少なく皮膚温が低いという結果でした。安静にしていても交感神経の緊張が続き、末梢循環がうまくいっていない状態だと結論されています。
ここが誤解されやすいところです。冷え症で低いのは主に手足の先の皮膚温であって、体の中心の温度が同じだけ下がっているわけではありません。末梢の血管を縮めるのは、中心の温度を守るための反応です。「手足が冷たい=体全体が低温=代謝が低い」という連想は、一歩抜けています。
「体温が1度上がると代謝が13%上がる」の出どころ
この数字は日本語圏で非常によく見かけます。一次研究をたどろうとした結果を正直に書きます。今回調べた範囲では、それを裏づける研究は見つかりませんでした。出てくるのは健康情報サイト、書籍の宣伝、商品のプレスリリースで、12%と書かれていたり13%と書かれていたりします。英語文献で「体温1℃あたり何%」が語られるのは発熱時の代謝を扱った古い文献の文脈で、その原典を開いて確認することはできませんでした。
仮に発熱時にその程度の変化があったとしても、それは病気で深部体温が上がったときの話です。生活習慣で平熱を1℃上げられるという前提そのものが確認できていません。ここは、断定しないほうが誠実な領域です。
むしろ、寒いほうが代謝は上がります
健康な男女32人(平均25歳)を18℃・22℃・28℃・38℃の環境に置いて安静時エネルギー消費量を測った研究(Henkel S ほか, The Journal of Nutrition, 2025)では、28℃と比べて18℃で1日96±24kcal(p<0.001)、22℃で73±24kcal(p=0.003)高いという結果でした。涼しいほうが代謝は上がっています。体が熱を作ってバランスを取ろうとするからです。
褐色脂肪の研究も同じ向きです。日本の研究(Yoneshiro T ほか, The Journal of Clinical Investigation, 2013)では、17℃の部屋に1日2時間、6週間入った12人で寒冷による熱産生が1日108.4±22.8kcalから289.0±70.0kcalに増え、体脂肪量が5.2±1.9%(0.70±0.23kg)減りました。一方、15〜16℃に10日間(1日最大6時間)曝露した17人の研究(van der Lans AAJJ ほか, The Journal of Clinical Investigation, 2013)では、非ふるえ熱産生は10.8±7.5%から17.8±11.1%に増えたものの、体重と体組成に有意な変化はありませんでした。
正直に書きます。結果は割れています。共通して言えるのは、体を温めて痩せたのではなく寒さにさらして熱産生が増えたという向きの研究しか見つからなかったこと、そして0.7kgの減少に6週間の毎日2時間が必要だった計算になることです。
筋肉を増やすと、代謝はどれくらい上がるのか
臓器・組織ごとの単位重量あたりの代謝率を扱った研究(Wang Z ほか, The American Journal of Clinical Nutrition, 2010、131人)では、骨格筋は1kgあたり1日13kcal、肝臓は200kcal、脳は240kcal、心臓と腎臓は440kcalです。筋肉は総量が大きいので全体への寄与は無視できませんが、1kgあたりで見れば内臓よりずっと低い値です。
実測もあります。健康成人61人が約9か月(96回)の筋力トレーニングをおこなった研究(Aristizabal JC ほか, European Journal of Clinical Nutrition, 2015)では、安静時代謝率が1653±302kcal/日から1726±291kcal/日(p=0.001)へ約73kcal、率にして約5%増えました。
末梢循環については、レジスタンストレーニングと血管内皮機能のメタ解析(Silva JKTNF ほか, Atherosclerosis, 2021)があります。23研究・785人を統合し、血流依存性血管拡張反応(FMD)が対照群にくらべて2.39ポイント(95%信頼区間1.65〜3.14)改善しました。ただしこれは血管機能の指標で、冷えの自覚が減ったかを測った研究ではありません。「筋トレで冷えが治る」とは言えません。
減量中に手足が冷えるのは、珍しいことではありません
健康な若年男性32人に3週間の食事制限をおこなった研究(Müller MJ ほか, The American Journal of Clinical Nutrition, 2015)では、体重が約7.5%減り、安静時エネルギー消費量が1日266kcal低下し、体温が0.3℃低下しました。除脂肪量の減少で説明できない分(代謝適応)は1日108kcalでした。同じ論文はミネソタ飢餓実験について、安静時エネルギー消費量が39%、約600kcal/日低下したと記しています。
つまり順序が逆のことがあります。「冷えているから痩せない」のではなく「エネルギーが足りないから冷える」。重度の冷えの人に食事制限中の割合が高かった(41.5%対28.9%)ことも、この向きと矛盾しません。
冷えの背後に病気があることがあります
甲状腺機能低下症では寒がり(寒冷不耐性)が典型症状の一つです。ただし症状だけで診断はできません。顕性甲状腺機能低下症の患者を扱った総説(Jansen HI ほか, Frontiers in Endocrinology, 2023)によれば、患者が訴えた症状は疲れやすさ81%、乾燥肌63%、息切れ51%でしたが、検討した34症状のうち単独で診断に使える症状は一つもありませんでした。
貧血との関連も報告されています。福岡市の女子学生を対象にした調査(大和孝子・青峰正裕, 総合健診, 2002)では、冷え症群は体重とBMIが有意に低く、貧血が多くみられました。ただしこれも関連であって、貧血が冷えを起こした証明ではありません。
その上で、はっきり書きます。強い倦怠感、体重の変化、むくみ、脱毛、月経の異常をともなう冷えは、甲状腺機能低下症や貧血の可能性があり、受診が必要です。血液検査でわかることです。食事や運動で様子を見る前に、まず医療機関で確かめてください。私たちは診断をしません。
入浴と温かい飲み物について
高齢者1,479人(中央値68歳)の実生活での入浴を測った研究(Tai Y ほか, Environmental Health and Preventive Medicine, 2024)では、皮膚温が1℃上がるごとに収縮期血圧が2.41mmHg、脈拍が2.99拍/分上がっていました。入浴は皮膚温を確実に上げますが、減量の手段ではなく快適さと安全の問題として扱うべきものです。
温かい飲み物についても正直に書きます。10人に5.3℃の冷たい飲料と49.0℃の熱い飲料を比べた研究(Barwood MJ ほか, European Journal of Applied Physiology, 2018)はありますが、これは暑熱下の運動を想定したもので、温熱的な快適さが改善したのはむしろ冷たい飲料のほうでした。温かい飲み物が冷え症の自覚を改善すると示した研究は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。
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よくある質問
体を温めれば痩せますか
今回調べた範囲では、温めて痩せたことを示す研究は見つかりませんでした。むしろ18℃の部屋では28℃より安静時エネルギー消費が1日96kcal高く、17℃に1日2時間・6週間さらした研究では体脂肪が5.2%減っています。温めることは、快適さのために行うものです。
「体温が1度上がると代謝が13%上がる」は本当ですか
今回調べた範囲では、それを裏づける研究は見つかりませんでした。日本語の健康情報や広報資料では繰り返し見かけますが、一次研究にたどり着けませんでした。生活習慣で平熱を1℃上げられるという前提自体も確認できていません。ここは、断定しないほうが誠実な領域です。
筋トレをすれば冷えは治りますか
治ると断定はできません。約9か月の筋力トレーニングで安静時代謝が1653kcalから1726kcalへ73kcal増えた研究があり、23研究785人のメタ解析では血管内皮機能の指標が2.39ポイント改善しました。ただし、いずれも冷えの自覚そのものを測った研究ではありません。
参考:日吉のCLEAN.の場合
CLEAN.は日吉駅西口から徒歩3分の、女性専用・完全個室のパーソナルジムです。男性は法人契約と、既存会員様からのご紹介のみです。ウェア・シューズ・タオル・水はすべて無料で貸し出すので、手ぶらで通えます。
私たちができるのは、冷えを治すことではありません。9か月で安静時代謝が73kcal、メタ解析でFMDが2.39ポイント、という規模感の変化を続けられる形で積み上げることです。月額プランには毎日のLINE食事指導と10日ごとのフィードバックを含めています。減量中に手足が冷えはじめたとき、エネルギーが足りていないのかどうかを一緒に見られるようにするためです。
料金は月4回コースが42,000円(税込46,200円)、月8回コースが72,000円(税込79,200円)、24回分の回数券が211,200円(税込232,320円・有効期限180日/LINEの食事指導は含まれません)、入会金が30,000円(税込33,000円)です。これ以外の追加料金はありません。どれが合うかは3つのプランの違いと料金・プランのページをご覧ください。
体調や痛みに関わることは、まず受診をお願いしています。強い倦怠感、体重の変化、むくみ、脱毛、月経の異常をともなう冷えは、その代表です。トレーニングは医療の代わりにはなりません。
まとめ
冷え症は珍しくありません。日本人女性238人の調査で軽度49.6%、重度35.3%。そして冷えているのは主に手足の先で、安静時から末梢の血流が減っている状態が測定されています。
「体を温めれば痩せる」を支える研究は、今回見つかりませんでした。18℃の部屋は28℃より安静時代謝が1日96kcal高く、17℃に6週間通った研究では体脂肪が0.70kg減り、15〜16℃に10日間の研究では体組成が変わりませんでした。結果は割れていますが、いずれも「温める」実験ではありません。
代謝を上げる方向で確認できたのは地味な数字です。骨格筋は1kgあたり1日13kcal。9か月の筋力トレーニングで安静時代謝が73kcal、約5%の増加。血管内皮機能はメタ解析で2.39ポイントの改善。これが現時点で数字として言える範囲です。
逆に、3週間の食事制限で安静時代謝が266kcal下がり体温が0.3℃下がった研究があり、ミネソタ飢餓実験では安静時代謝が39%・約600kcal下がっています。減量中の冷えは、頑張りが足りないサインではなく、エネルギーが足りないサインかもしれません。そして倦怠感・体重変化・むくみ・脱毛・月経異常をともなう冷えは、受診してください。
日吉まで通うのが難しい方には、オンラインのご案内もあります。横浜のオンラインパーソナルトレーニング・オンライン食事指導(CLEAN.Online)では、画面越しにフォームを確認しながらのトレーニングと、食事のご相談を承っています。冷えについても、今日書いた範囲のことをお伝えします。
- CLEAN.
出典
Tsuboi S ほか, International Journal of Women's Health, 2019/Mandai N ほか, Cureus, 2026/Ogata M ほか, 日本看護技術学会誌, 2017/大和孝子・青峰正裕, 総合健診, 2002/Henkel S ほか, The Journal of Nutrition, 2025/Yoneshiro T ほか, The Journal of Clinical Investigation, 2013/van der Lans AAJJ ほか, The Journal of Clinical Investigation, 2013/Wang Z ほか, The American Journal of Clinical Nutrition, 2010/Aristizabal JC ほか, European Journal of Clinical Nutrition, 2015/Silva JKTNF ほか, Atherosclerosis, 2021/Müller MJ ほか, The American Journal of Clinical Nutrition, 2015/Jansen HI ほか, Frontiers in Endocrinology, 2023/Tai Y ほか, Environmental Health and Preventive Medicine, 2024/Barwood MJ ほか, European Journal of Applied Physiology, 2018