飲み会の翌日にやること、やらなくていいこと
「飲み会の翌日は、何を食べればいいですか」
日吉の体験トレーニングで、実際にうかがった言葉です。この質問の背後には、たいてい二つの不安があります。「昨日の分をどう取り返すか」と、「取り返さないと体重が戻らないのではないか」です。この記事では、今回実際に読んで確認できた研究と公的資料の範囲だけで答えます。確認できなかったことは、確認できなかったと書きます。
射程をはっきりさせます。扱うのは、健康な成人が飲み会の翌日に何をするか・しないかという範囲です。飲酒量を自分でコントロールできない状態は射程外で、厚生労働省の「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」にも、かかりつけ医等がいる場合には、飲酒についての相談をすることも有用だと書かれています。また、お酒をやめることを勧める記事ではありません。飲む前提で、翌日の扱い方を書きます。
まず、前日に何グラム飲んだのかを数える
厚生労働省の同ガイドラインでは、純アルコール量を摂取量(ml)×度数÷100×0.8(アルコールの比重)で計算すると示されています。ビール500ml(5%)なら500×0.05×0.8で20gです。
同じガイドラインは、生活習慣病のリスクを高める飲酒量を1日当たり男性40g以上、女性20g以上としています。女性の20gは、ビール500ml缶1本です。また1回の飲酒機会で60g以上の一時多量飲酒は外傷の危険性も高めるため避けるべきだとされ、女性は男性に比べて少ない量かつ短い期間の飲酒でアルコール関連肝硬変になる場合がある、とも記されています。
令和5年(2023年)の国民健康・栄養調査結果の概要では、この量に該当する人の割合は男性14.1%、女性9.5%でした。女性では50〜59歳が14.6%で最も高く、40〜49歳が13.5%、20〜29歳が7.8%です。なお、アルコール1gが何kcalかという数値は、このガイドラインには記載がなかったため、この記事では書きません。
飲んだ日、脂肪の燃え方はどうなるか
ここは実験で確認されている部分があります。Shelmetほかが1988年にThe Journal of Clinical Investigation誌に発表した研究では、健康な男性6名にエタノールを投与し、対照条件と比較しました。エタノールは全身の脂肪酸化を79%低下させ、タンパク質の酸化を39%低下させ、対照で見られたブドウ糖投与後の糖酸化の249%の上昇をほぼ完全に打ち消し、糖処理を36%低下させています。
「飲んでいる間は脂肪が燃えにくい」という話には、この裏づけがあります。ただし対象は6名、男性のみ、実験室での投与です。「昨日の揚げ物が全部脂肪になった」とは読み替えられません。わかるのは、アルコールがある間は体がそれを優先的に処理する、という方向性までです。
「飲むと食べすぎる」は本当か
ここは比較的大きな証拠があります。Kwokほかが2019年にBritish Journal of Nutrition誌に発表した系統的レビューとメタ解析は、22研究・701名を対象にしています。アルコール飲料とノンアルコール飲料を比べると、食事から摂るエネルギーは343kJ(95%信頼区間161〜525kJ)多くなり(12研究・417名)、総エネルギー摂取量は1072kJ(95%信頼区間820〜1323kJ)多くなりました(8研究・269名)。論文は、アルコール飲料の分を食事のエネルギーを減らして埋め合わせることは一貫して起きなかった、と述べています。
一方で、正直に書きます。このメタ解析が扱うのは飲んだその場面の摂取量で、翌日の食事量については記載がありませんでした。「翌日は食欲が増す」という話を直接検証したランダム化比較試験も、今回は確認できませんでした。ここは、断定しないほうが誠実な領域です。
翌日、体重計の数字が動いている理由
翌朝の増加は、水分・グリコーゲン・ナトリウムで説明されることが多いのですが、今回調べた範囲では、それらで説明した研究を確認できませんでした。もっともらしく聞こえますが、裏づけを確認できていない以上、断定しません。
代わりに確認できた数字を置きます。Kwokほかのレビューで体重を測定していたのは22研究のうち3研究のみ、期間は13日から10週で、有意な差は見られませんでした。飲酒と体重の関係を測った研究自体が、まだ少ないということです。実務的に言えるのはここまでです。翌朝の1回より、前後を含めた1週間の平均のほうが扱いやすい情報になります。
二日酔いの日に、動いたほうがいいのか
現場を観察した研究があります。Versterほかが2020年にJournal of Clinical Medicine誌に発表した研究は、ギリシャのサマリア渓谷を歩いた299名を対象にしました。前夜に飲酒したのは223名(74.6%)、そのうち176名(78.9%)が二日酔いを報告し、平均飲酒量は3.0杯、二日酔いの重症度は10点満点で平均4.6でした。
二日酔いのあった人は、歩いたあとに有意に強い疲労感を報告しました(p=0.004)。しかし歩行時間にも、休憩の回数や長さにも有意な差はなく、重症度は歩行に関するどの指標とも相関しませんでした。「きつく感じる」ことは確認できていますが、「動けなくなる」とまでは言えません。ただしこれは観察研究で、ハイキングという特定の活動です。
そしてもうひとつ。「翌日に走って帳消しにする」ことを裏づける研究は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。前日のエネルギーを翌日の運動で相殺できるかを検証した研究を、確認できていません。翌日に動くこと自体は否定しませんが、帳消しを目的にする根拠はありません。
筋トレをしている人にとっての論点
Parrほかが2014年にPLOS ONE誌に発表した研究では、身体活動的な男性8名が、持久系と筋力系を組み合わせたトレーニングを1回行ったあとの回復期に、3条件をランダムクロスオーバーで実施しました。アルコール量は体重1kgあたり1.5g、杯数にして12±2杯という、かなり多い量です。
運動後2〜8時間の筋原線維タンパク合成速度は、タンパク質のみで0.052±0.008%/時、アルコール+タンパク質で0.039±0.008%/時(24%低下)、アルコール+糖質で0.032±0.005%/時(37%低下)でした。ただし8名・男性のみで、量は12±2杯です。ワイン1杯で同じことが起きるとは言えません。「かなり多く飲んだ直後の回復期に、測定できる差が出た」と読むのが正確です。
睡眠は、どう変わるか
Ebrahimほかが2013年にAlcoholism: Clinical and Experimental Research誌に発表した文献を確認しました。これはメタ解析ではなく総説です。この点は正直に書いておきます。内容としては、通常の摂取量ではアルコールは入眠までの時間を短くし、夜の前半の睡眠をまとまったものにする一方で、後半を乱すとされています。レム睡眠への影響は用量依存的で、高用量では有意に減少し、徐波睡眠の増加は用量・年齢・性別を問わず一貫して見られるとされています。
翌日に引き寄せると、寝つきが良く感じられても夜の後半は乱れている可能性がある、ということになります。翌日だるいのは怠けているからではなく、睡眠の質が変わったあとの体で過ごしているのかもしれません。ただしこれは総説の記述で、翌日のパフォーマンスとの因果を示した数字ではありません。
では、翌日に何をやり、何をやらなくていいか
- やらなくていい:前日分を相殺するための追加の運動。翌日の運動で相殺できるという研究は確認できませんでした。
- やらなくていい:翌日の極端な絶食。支持する研究は確認できませんでした。
- やらなくていい:翌朝の体重1回で判断すること。体重を測った研究は22研究のうち3研究のみでした。
- やっていい:普段の食事に戻すこと。飲酒日に総エネルギーが1072kJ上乗せされるので、翌日を平常に戻せば上乗せは前日1日分で止まります。
- やっていい:睡眠を確保すること。夜の後半が乱れる可能性が総説で述べられています。
- やっていい:純アルコール量を数えること。女性は20g、ビール500ml缶1本が目安です。
お酒との距離には、人それぞれの事情があります。飲まない選択も飲む選択も、この記事が決めることではありません。ただ、量をコントロールできないと感じる場面が続くときは、かかりつけ医等への相談が選択肢になります。
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よくある質問
飲み会の翌日は、何を食べればいいですか。
今回調べた範囲では、翌日の食事内容を指定する研究は確認できませんでした。確認できたのはKwokほかの22研究701名のメタ解析で、飲酒時に総エネルギー摂取量が1072kJ多くなるという結果です。翌日は普段の食事に戻すことが、記録の上で扱いやすい選択になります。
翌日に走れば、飲んだ分は帳消しになりますか。
今回調べた範囲では、それを裏づける研究は見つかりませんでした。二日酔いで渓谷を歩いた299名の調査では、疲労感は有意に強くなった一方で、歩行時間に有意差はありませんでした。動けないわけではありませんが、帳消しを目的に走る根拠は確認できていません。
飲んだ翌朝、体重が増えていました。脂肪が増えたのでしょうか。
ここは、断定しないほうが誠実な領域です。水分やナトリウムで説明する話はよく聞きますが、今回調べた範囲でその裏づけは確認できませんでした。確認できたのは、飲酒と体重を測った研究が22研究のうち3研究のみで、13日から10週の期間で有意差がなかったという記録です。
参考:日吉のCLEAN.の場合
CLEAN.は、日吉駅西口から徒歩3分の、女性専用・完全個室のパーソナルジムです。男性は法人契約と、既存会員様からのご紹介のみとしています。ウェア・シューズ・タオル・水はすべて無料で貸し出すので、手ぶらで通えます。
月額プランには、毎日のLINE食事指導と、10日ごとのフィードバックが含まれます。飲み会の翌日に何を食べるかは、このLINEで多く届く質問のひとつです。10日ごとのフィードバックを挟むのは、1日の数字ではなく10日単位の流れで見るためです。
料金は、月4回コース42,000円(税込46,200円)、月8回コース72,000円(税込79,200円)、24回分の回数券211,200円(税込232,320円・有効期限180日/LINEの食事指導は含まれません)、入会金30,000円(税込33,000円)。これ以外の追加料金はありません。プランの違いは3つのプランの違い、金額の内訳は料金・プランのページにまとめています。
なお、体調に関わることについては、まず受診をお願いしています。飲酒量が自分でコントロールできない、飲まないと落ち着かないといったご相談は、トレーニングではなく医療の範囲です。この線引きは、はっきりさせておきます。
まとめ
数字で振り返ります。厚生労働省のガイドラインでは、生活習慣病のリスクを高める量は男性40g、女性20g、計算式は摂取量(ml)×度数÷100×0.8で、ビール500ml(5%)が20gです。令和5年の国民健康・栄養調査で、この量に該当する女性は9.5%、50〜59歳では14.6%でした。
飲んだその日については、Shelmetほかの6名の実験で脂肪酸化が79%低下し、Kwokほかの22研究・701名のメタ解析で総エネルギー摂取量が1072kJ上乗せされました。上乗せ分を食事で埋め合わせる動きは、一貫して見られませんでした。
翌日については、確認できたことが少なくなります。Versterほかの299名の観察では、二日酔いのある人の疲労感は有意に強かった一方、歩行時間に差はありませんでした。翌日の運動で前日を相殺できるという研究も、翌日の食事量を直接調べた試験も、翌朝の体重を水分で説明した研究も、今回は確認できませんでした。ここは、断定しないほうが誠実な領域です。
翌日にやらなくていいのは、帳消しのための運動と、極端な絶食と、1回の体重で判断することです。やっていいのは、普段の食事に戻すことと、睡眠を取ることと、前日に何g飲んだかを数えることです。飲んだ翌日の自分を責める材料は、今回の調べものの中には見つかりませんでした。
日吉まで通うのが難しい方には、オンラインでの対応もあります。横浜のオンラインパーソナルトレーニング・オンライン食事指導(CLEAN.Online)では、画面越しのトレーニングと食事のやりとりを行っています。飲み会が続く時期の食事の組み立ても、同じようにご相談いただけます。
- CLEAN.
出典
厚生労働省, 健康に配慮した飲酒に関するガイドライン, 2024/厚生労働省, 令和5年国民健康・栄養調査結果の概要, 2025/Shelmet JJ ほか, The Journal of Clinical Investigation, 1988/Kwok A ほか, British Journal of Nutrition, 2019/Parr EB ほか, PLOS ONE, 2014/Verster JC ほか, Journal of Clinical Medicine, 2020/Ebrahim IO ほか, Alcoholism: Clinical and Experimental Research, 2013