運動しているのに痩せないのはなぜか

「週3で運動しているのに、体重が1kgも減りません」

日吉の体験トレーニングで、実際にうかがった言葉です。ご本人は3か月ほど、仕事帰りに週3回ジムに通い、有酸素運動を40分ずつ続けていらっしゃいました。サボっているわけでも、やり方を間違えているわけでもありません。それでも体重計の数字が動かない。この記事は、その状況を責めずに説明するために書きます。扱うのは、運動介入の減量効果が予測より小さいことを示した研究、同じ運動量でも減り方の個人差が非常に大きいこと、その差がどこから来るのか(代償)、そして活動量を増やしても総エネルギー消費が比例して増えるとは限らないという考え方です。

先にお断りしておきます。この記事は「運動は無駄だ」という結論にはなりません。運動をやめる理由を探す記事ではなく、体重計だけで判定するのをやめる理由を探す記事です。そしてもうひとつ。この記事では、実際に原典を開いて確認できた研究の数字だけを書きます。運動機器や活動量計の消費カロリー表示の誤差、運動後の「ご褒美」による摂取増、運動の血圧・血糖・死亡率への効果については、今回、原典で数値を確認しきれませんでした。ですので、それらについて具体的な数字は一切書きません。書かないことも、この記事の内容のうちだと考えています。

運動だけの減量効果は、もともと「予測より小さい」

まず、いちばん大きな数字から見ていきます。Church らが2009年に PLOS ONE で報告した無作為化比較試験です。対象は座りがちな過体重・肥満の閉経後女性で、464名が無作為に割り付けられ、411名が解析されました。平均年齢は57.2歳です。運動量を4群に分け、6か月間続けました。

  • 対照群:運動なし
  • 低用量群:週4kcal/kg、週72分
  • 中用量群:週8kcal/kg、週136分
  • 高用量群:週12kcal/kg、週194分

結果です。6か月後の実際の体重変化は、低用量群が−1.4kg、中用量群が−2.1kg、高用量群が−1.5kgでした。ここで大事なのは、週194分(1日あたり30分弱を毎日に近いペース)まで運動量を増やした高用量群が、週136分の中用量群より減っていないことです。

この試験では、消費したエネルギー量から計算した「予測される減量」も出しています。低用量群−1.0kg、中用量群−2.0kg、高用量群−2.7kg。実測から予測を引いた差が、いわゆる代償です。低用量群は−0.3kg、中用量群は−0.2kgで、統計的に意味のある代償は見られませんでした。ところが高用量群だけは+1.2kg、つまり予測より1.2kg減らなかった、という結果になりました。

ここから読み取れることは2つあります。運動だけの減量幅はもともと1〜2kg台だということ、そして運動量を増やせば比例して減るという素朴な足し算が、データではあまり成り立っていないということです。「週3で運動しているのに1kgも減らない」という状況は、研究の平均値から見て、特別な失敗ではありません。

同じ運動をしても、減り方は人によって16kg分ちがう

平均の数字は、ときに現実を隠します。King らが2008年に International Journal of Obesity で報告した研究が、そこを正面から扱っています。対象は座りがちな過体重・肥満の男女35名。BMIは平均31.8、年齢は平均39.6歳。週5回、12週間、監督下で運動を続けてもらいました。

12週間後の平均体重変化は−3.7kgでした。ここだけ見れば、運動はよく効いたように見えます。ところが個人差の幅は、−14.7kgから+1.7kgまで広がっていました。同じプログラムを同じ期間やって、15kg近く減った方と、少し増えた方が同居しているということです。

研究チームは参加者を、予測どおり減った方(非代償群)と、予測より減らなかった方(代償群)に分けました。非代償群の減量は−6.3kg、代償群は−1.5kg。つまり「運動しているのに減らない」は、統計のなかに確かに存在する、めずらしくないパターンです。ご自身の意志の問題として片づけるには、幅が大きすぎます。

代償は、どこで起きているのか

では、その差はどこから来るのでしょうか。代償の道筋は、大きく2つに分けて考えられます。ひとつは食べる量が増えること、もうひとつは運動以外の活動が減ることです。King らの研究は、このうち食べる量のほうを実測しています。

代償群では、1日のエネルギー摂取量が+268.2kcal増えていました。空腹感の指標も上がっています。一方、非代償群では摂取量が−130kcalと、むしろ減っていました。安静時代謝率の変化は、代償群が−69.2kcal/日、非代償群が+14.2kcal/日で、どちらも標準偏差が240kcal/日を超えるほど大きく、平均値だけで語れる差ではありません。

1日268kcalというのは、おにぎり1.5個ぶん程度です。運動後に自然と手が伸びる量として、まったく不自然ではありません。しかも本人には自覚されにくい。「特に食べる量は変えていません」というご申告は、多くの場合、嘘ではなく、単に見えていないだけです。

もうひとつの道筋、運動以外の活動が減るほう(トレーニングの日の夕方にソファから動かなくなる、など)については、食べる量と切り分けて測った研究を、今回わたしは原典で確認できませんでした。ですので、ここでは数値を挙げません。ここは、断定しないほうが誠実な領域です。

活動量を増やしても、総消費は比例して増えない

もう少し根本的な話をします。Pontzer らが2016年に Current Biology で発表した「制約モデル(constrained model)」です。5つの集団の成人332名について、二重標識水法で総エネルギー消費量を、加速度計で身体活動量を測りました。二重標識水法は、消費カロリーの測定としてはもっとも精度が高いとされる方法です。

体格と体組成を調整したうえで、総エネルギー消費量は身体活動量と正の相関を示しました。ただし、その関係は活動量が低い範囲でははっきり強く、高い範囲では頭打ちになっていたと報告されています。動かない人が動きはじめたときには総消費が素直に増えるけれど、すでにかなり動いている人がさらに増やしても、総消費はそれほど伸びない、という形です。

この論文は、活動量と総消費を単純な足し算で結ぶ公衆衛生モデルは見直されるべきだ、と結論しています。もっとも、制約モデルは現在も議論が続いている領域で、個人の減量にどこまで当てはめてよいかは、この論文だけでは決められません。ここも、断定しないほうが誠実な領域です。

体重が動かなくても、体は変わっている

ここで、Church らの試験に戻ります。この試験では体重だけでなく、ウエスト周囲径も測っていました。そして運動群では、体重の変化とは独立して、ウエスト周囲径が有意に減っていました。体重が減らなかった方のウエストの減り幅は、減った方のおよそ半分ほどでしたが、ゼロではなかったということです。

体重計の数字は、脂肪・筋肉・水分・グリコーゲン・消化管の内容物の合計です。運動をはじめた時期は、筋グリコーゲンとそれに結びつく水分が増えるため、脂肪が減っていても体重が動かない、あるいは一時的に増えることが起こり得ます。運動によって除脂肪量が増える場合も同じです。ただし、除脂肪量の増加量を具体的な数値で示した介入研究を、今回わたしは原典で確認できませんでしたので、ここでも数字は挙げません。

では、何を見ればいいのか

ここまでの数字を踏まえると、見るべき指標は自然に決まってきます。

  • ウエスト周囲径:Church らの試験で、体重と独立に減っていた指標です。週1回、同じ条件で測ります。
  • 体重の「流れ」:1日の数字ではなく、7日平均や10日単位の推移。King らの研究が示したとおり、個人差は−14.7kgから+1.7kgまであります。他人との比較より、自分の線の向きです。
  • 扱える重量:同じ重量で回数が伸びる、同じ回数で重量が上がる。これは体重が動かない時期でも、ほぼ必ず動きます。
  • 食事の実際の量:代償群で+268.2kcal/日という数字が出ている以上、記録して見えるようにする価値があります。

よくある質問

週3回運動しているのに体重が減りません。効果が出ていないということでしょうか。

Church らの試験では、週72〜194分の運動を6か月続けた実際の減量幅は1.4〜2.1kgでした。運動単独の減量効果は、もともとその程度です。効果が出ていないのではなく、体重計という物差しでは見えにくい、という状態がよく起こります。

同じように運動しても、減る人と減らない人がいるのはなぜですか。

King らの研究では12週間で平均3.7kg減った一方、個人差は−14.7kgから+1.7kgまで広がっていました。予測より減らなかった群では摂取エネルギーが1日あたり268.2kcal増えており、食欲側の反応の差が要因のひとつと報告されています。

体重以外に、何を見ればよいですか。

Church らの試験では、体重が減らなかった方でもウエスト周囲径は減っていました。CLEAN.では1日の体重ではなく、体重の流れ、ウエストまわり、トレーニングで扱える重量の3つを見ています。10日ごとにまとめてフィードバックします。

参考:日吉のCLEAN.の場合

CLEAN.は、日吉駅 西口から徒歩3分の、女性専用・完全個室のパーソナルジムです。男性は法人契約と、既存会員様からのご紹介のみとさせていただいています。ウェア・シューズ・タオル・水はすべて無料で貸し出しますので、手ぶらでお越しいただけます。仕事帰りにそのまま寄れることは、週あたりの運動時間を落とさないという点で、地味に効きます。

月額プランには、毎日のLINE食事指導と、10日ごとのフィードバックが含まれます。毎日のやりとりを置いているのは、この記事で見た代償が、まさに食事側に出るからです。1日268.2kcalという差は、月に一度の面談では見つかりません。日々の記録があってはじめて、見えるようになります。

そして、見ているのは1日の体重ではありません。体重の流れと、ウエストまわりと、トレーニングで扱える重量の推移です。体重計が10日間動かなくても、ウエストが1cm減っていて、扱える重量が上がっていれば、それは進んでいる10日間だと判断します。

料金は、月4回コースが42,000円(税込46,200円)、月8回コースが72,000円(税込79,200円)、24回分の回数券が211,200円(税込232,320円・有効期限180日/LINEの食事指導は含まれません)。入会金は30,000円(税込33,000円)で、これ以外の追加料金はありません。3つのプランの違いと料金・プランのページに、それぞれまとめてあります。

まとめ

運動しているのに痩せない理由を、確認できた数字だけで並べ直します。第一に、運動だけの減量幅はもともと小さい。Church らの6か月の試験で、実際の減量は1.4〜2.1kgでした。第二に、運動量を増やしても比例しない。週194分の高用量群は、予測−2.7kgに対して実測−1.5kg、差は+1.2kgでした。

第三に、個人差が非常に大きい。King らの研究では、同じ12週間で−14.7kgから+1.7kgまで幅がありました。そして予測より減らなかった群では、摂取エネルギーが1日268.2kcal増えていました。減らないことには、意志とは別の、測れる理由があります。

第四に、総エネルギー消費は活動量に比例しない可能性がある。Pontzer らの332名のデータでは、活動量の高い範囲で総消費が頭打ちになっていました。ただしこのモデルの一般化には議論があり、ここは断定しないほうが誠実な領域です。

最後に、それでも運動をやめる理由にはなりません。同じ Church らの試験で、体重が減らなかった方でもウエスト周囲径は減っていました。1日の数字ではなく流れを、体重だけでなくウエストと扱える重量を。ここを一緒に整えるのが、わたしたちの仕事です。

日吉まで通うのが難しい方、転勤や出張の多い方には、オンラインでのご案内もあります。横浜のオンラインパーソナルトレーニング・オンライン食事指導(CLEAN.Online)では、同じ考え方で、体重の流れとウエストまわりと扱える重量を見ながら進めていきます。まずは今の記録を見せていただくところからで大丈夫です。

- CLEAN.

出典

Church TS, Martin CK, Thompson AM, Earnest CP, Mikus CR, Blair SN, PLOS ONE, 2009/King NA, Hopkins M, Caudwell P, Stubbs RJ, Blundell JE, International Journal of Obesity, 2008/Pontzer H, Durazo-Arvizu R, Dugas LR, Plange-Rhule J, Bovet P, Forrester TE, Lambert EV, Cooper RS, Schoeller DA, Luke A, Current Biology, 2016

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