糖質制限は本当に他より痩せるのか。12か月後の差は0.7kgでした

「やっぱりお米は抜いたほうがいいですよね」

日吉の体験トレーニングで、たぶんいちばん多くうかがう言葉です。ほとんどの方が、すでに一度は糖質制限を試しています。そして「最初の2週間はすごく落ちたのに、そのあと止まった」という続きがセットでついてきます。効くのか効かないのか以前に、多くの方はもう実体験として答えの一部を持っておられます。

この記事では、糖質制限が他の食事法より本当に痩せるのかを、実際に確認できた研究の数字だけで整理します。12か月追跡した大規模なランダム化比較試験、摂取エネルギーを厳密に管理した代謝病棟の研究、死亡リスクを見た観察研究、そして厚生労働省の基準です。結論を先に書くと、差は思っているより小さく、研究によって結果が割れています。割れているところは、正直に書きます。

最初の2週間で落ちる数字は、ほとんど脂肪ではありません

糖質制限を始めて数日で体重が2kg落ちる。これは事実です。ただし中身が問題です。

Murray と Rosenbloom が Nutrition Reviews(2018年)にまとめたレビューによると、全身のグリコーゲン貯蔵量はおよそ600g(筋肉に平均500g、肝臓に平均80g)で、グリコーゲン1gは少なくとも3gの水と一緒に貯蔵されます。単純計算で、使い切れば2kg前後の体重が動きます。

これを実測したのが Hall らの代謝病棟研究(American Journal of Clinical Nutrition, 2016年)です。過体重・肥満の男性17人が、4週間の高炭水化物食のあと、エネルギー量とたんぱく質量を揃えたまま4週間のケトン食に切り替えました。最初の15日間で体重は1.6±0.2kg減少しましたが、著者らはこれを主に水分の損失と説明しています。体脂肪はベースライン食の最後の15日間で0.5±0.1kg、ケトン食28日間で0.5±0.2kg。同じ0.5kgを落とすのに期間が倍近くかかり、減少ペースはむしろ鈍化しました。

体重計の数字が動くことと、脂肪が減ることは別です。

12か月で比べたとき、差は何kgだったか

もっとも参照されるのが、Gardner らの DIETFITS試験(JAMA, 2018年)です。過体重・肥満の成人609人を、健康的な低脂質食と健康的な低炭水化物食にランダムに割り付け、12か月追跡しました。

12か月後の体重変化は、低脂質群が−5.3kg、低炭水化物群が−6.0kg。群間差は0.7kg(95%信頼区間 −0.2〜1.6kg)で、統計的に有意ではありませんでした。

この試験は「体質によって合う食事法が違うのではないか」という仮説も検証しています。あらかじめ低脂質向き・低炭水化物向きとされる遺伝子型パターンで層別しても交互作用は有意ではなく(P = .20)、ブドウ糖負荷30分後のインスリン分泌で層別しても有意ではありませんでした(P = .47)。「インスリンが出やすい人は糖質制限が効く」という説明は、609人を12か月追った試験では支持されませんでした。

Johnston らの JAMA(2014年)のメタ解析も同じ方向です。48件のランダム化比較試験、7,286人を統合した12か月時点の減量は、低炭水化物食が7.25kg(95%信頼区間 5.33〜9.25)、低脂質食が7.27kg(5.26〜9.34)。信頼区間はほぼ完全に重なります。

正直に書きます。ここは結果が割れています。Tobias らが Lancet Diabetes & Endocrinology(2015年)に発表した53件の試験・68,128人の系統的レビューでは、低炭水化物食は低脂質食より平均1.15kg(95%信頼区間 0.52〜1.79、I² = 10%)多く減っていました。統計的に有意です。ただし、割れているといっても割れ幅は1kg前後です。

摂取エネルギーを完全に揃えるとどうなるか

実生活の試験では、食事内容が違えば食べる量も変わります。そこで入院させ、エネルギーを厳密に一致させたのが Hall らの Cell Metabolism(2015年)です。

肥満の成人19人を代謝病棟に入院させ、エネルギーを30%削減した6日間の介入を行います。削減の手段は、炭水化物だけを減らすか、脂質だけを減らすか。同一人物が両方を経験するクロスオーバー設計です。結果は、体脂肪の減少は脂質制限のほうが大きく(89±6 g/日 対 53±6 g/日、p = 0.002)、6日間の累積では463±37g 対 245±21g(p < 0.0001)。ところが体重の減少は炭水化物制限のほうが大きい(−1.85±0.15kg 対 −1.30±0.16kg、p = 0.022)。摂取エネルギーを揃えた条件で「炭水化物を減らすこと自体に脂肪減少の優位性がある」という証拠は、得られていません。

たんぱく質を揃えると、差は消えるのか

糖質制限をすると、結果的にたんぱく質の割合が上がることがよくあります。その効果を切り分けたのが Soenen らの Physiology & Behavior(2012年)です。132人を、たんぱく質量と炭水化物量の2×2に割り付け、3か月の減量期と9か月の維持期を追いました。3か月時点の体重減少は、高たんぱく群(体重1kgあたり1.1g)が−14.1±4kg、標準たんぱく群(0.7g/kg)が−11.5±4kg。差を生んでいたのはたんぱく質量であって、炭水化物を減らしたこと自体ではありませんでした。DIETFITS試験でも、12か月時点のたんぱく質摂取が21%対23%とほぼ揃ったうえでの0.7kg差です。

結局、差を決めているのは続けられたかどうかです

Dansinger らの JAMA(2005年)は、この論点を直接的に示しました。160人をアトキンス(低炭水化物)、ゾーン、ウェイトウォッチャーズ、オーニッシュ(低脂質)に割り付けて1年追跡したところ、完遂したのはアトキンス40人中21人、ゾーン26人、ウェイトウォッチャーズ26人、オーニッシュ20人。どの食事法でも半数前後が脱落し、減量幅と相関していたのは自己申告の遵守度であって、食事法の種類ではありませんでした。

Sacks らの POUNDS LOST試験(New England Journal of Medicine, 2009年)も同じです。811人を栄養素比率の異なる4つの食事に割り付けて2年追跡した結果、6か月時点で約6kg(体重の7%)減った体重は2年時点で約3〜4kgに戻り、どの比率でも差はありませんでした。一方で、カウンセリングへの出席回数は減量と強く相関しています。DIETFITS試験ですら、12か月を完遂したのは609人中481人(79%)でした。

極端な糖質制限と死亡リスク。ここも割れています

Seidelmann らが Lancet Public Health(2018年)で報告した ARIC研究は、15,428人を中央値25年追跡し、炭水化物の摂取エネルギー比と死亡率がU字型の関係を示しました。50〜55%を基準にすると、40%未満のハザード比は1.20(95%信頼区間 1.09〜1.32)、70%超は1.23(1.11〜1.36)。50歳時点の平均余命の推定差は、低炭水化物側で−4.0年(−5.3〜−2.6)。ただし同じ論文が補足しています。炭水化物を動物性の脂質・たんぱく質に置き換えた場合はハザード比1.18(1.08〜1.29)、植物性に置き換えた場合は0.82(0.78〜0.87)。何を減らすかより、何に置き換えるかで向きが変わります。Noto らの PLOS ONE(2013年)のメタ解析も同方向で、272,216人から全死因死亡のリスク比1.31(1.07〜1.59)を報告しています。

反対に、Angelotti らが Frontiers in Nutrition(2024年)で報告した米国NHANES 1999〜2018年の解析では、35,888人を平均10.2年追跡し、炭水化物が総エネルギーの45%未満の群の全死因死亡ハザード比は0.98(95%信頼区間 0.87〜1.11)で、45〜65%の群と差がありませんでした。観察研究は食事法を割り付けたものではなく、背景の生活全体の影響を切り離せません。「極端な糖質制限が長期的に安全だ」とも「危険だと確定している」とも言えない。現時点では、そこまでです。

日本の基準はどう言っているか

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、生活習慣病の発症予防を目的とした目標量が示されています。18〜64歳ではたんぱく質13〜20%エネルギー、脂質20〜30%エネルギー、炭水化物50〜65%エネルギー。65歳以上ではフレイル予防の観点からたんぱく質が15〜20%エネルギーに引き上げられ、炭水化物は同じく50〜65%エネルギーです。

1日1,800kcalの方なら、炭水化物50〜65%は225〜293gに相当します。よく見る「1日の糖質を50g以下に」という設定が公的な目標量からどれだけ離れているかは、この数字で分かります。離れていることが即座に悪いわけではありませんが、自覚は要ります。

参考:日吉のCLEAN.の場合

CLEAN.は日吉駅の西口から徒歩3分、女性専用・完全個室のパーソナルジムです(男性は法人契約と、既存会員様からのご紹介のみ承っています)。体験で「糖質は何gまでにすべきですか」と聞かれることは多いのですが、最初にうかがうのはその数字ではなく、普段どんな一日を過ごしておられるかです。朝食を抜きがちなのか、外食が多いのか、夜が遅いのか。ここまでの研究が示していたのは、食事法の名前より、その人が12か月続けられる形かどうかだからです。

月額プランには、毎日のLINE食事指導と、10日ごとのフィードバックが含まれます。毎日やりとりするのは、完璧な食事を作っていただくためではありません。守れた日と崩れた日がどこにあるのかを、10日という短い単位で見直して調整するためです。続く形をつくるところに手間をかけています。

プランは、月4回コースが42,000円(税込46,200円)、月8回コースが72,000円(税込79,200円)。回数券は24回分で211,200円(税込232,320円・有効期限180日)で、こちらにはLINEの食事指導は含まれません。入会金は30,000円(税込33,000円)、これ以外の追加料金はありません。迷われる場合は3つのプランの違いと料金・プランのページをご覧ください。

ウェア・シューズ・タオル・水はすべて無料で貸し出していますので、手ぶらでお越しいただけます。荷物の準備がいらないという小さな条件が、通い続けられるかを地味に左右します。食事も同じです。

まとめ

12か月という物差しで見ると、低炭水化物食と低脂質食の差は小さいものでした。DIETFITS試験(609人)で群間差0.7kg、有意差なし。Johnston らのメタ解析(48試験・7,286人)でも7.25kg 対 7.27kg。一方 Tobias らのメタ解析(53試験・68,128人)は1.15kgの有意な優位を報告しています。結果は割れていますが、割れ幅は1kg前後です。

摂取エネルギーを厳密に揃えた代謝病棟研究では、6日間で体脂肪が多く減ったのは脂質制限のほう(89g/日 対 53g/日、p = 0.002)、体重が多く減ったのは炭水化物制限のほう(−1.85kg 対 −1.30kg、p = 0.022)でした。最初に動く数字の正体は、グリコーゲン1gあたり3g以上の水分と、全身で約600gの貯蔵です。たんぱく質量を揃えた研究で差を生んでいたのは、炭水化物ではなくたんぱく質量でした。

1年で半数前後が脱落し、減量幅と相関するのは遵守度であって食事法の種類ではない、というデータもあります。死亡リスクは、ハザード比1.20やリスク比1.31を報告する研究と、45%未満でハザード比0.98だったとする研究があり、結論が出ていません。日本の目標量は炭水化物50〜65%エネルギー、たんぱく質13〜20%エネルギー(65歳以上は15〜20%)です。

糖質制限を否定するつもりはありません。お菓子と甘い飲み物と深夜のラーメンを減らすという形で糖質を減らせば、十分に効きます。続けられるなら、有効な選択肢のひとつです。ただし「他より優れているから」ではなく「自分が続けやすいから」を理由に選んでいただきたい、というのがこの記事の着地点です。お米を抜くかどうかは、そのあとの話で構いません。

日吉まで通うのが難しい方、まずは食事から整えたい方には、オンラインでの対応もご用意しています。横浜のオンラインパーソナルトレーニング・オンライン食事指導(CLEAN.Online)のページをご覧ください。

- CLEAN.

出典

Gardner CD ほか, JAMA, 2018年/Johnston BC ほか, JAMA, 2014年/Tobias DK ほか, The Lancet Diabetes & Endocrinology, 2015年/Hall KD ほか, Cell Metabolism, 2015年/Hall KD ほか, The American Journal of Clinical Nutrition, 2016年/Murray B, Rosenbloom C, Nutrition Reviews, 2018年/Soenen S ほか, Physiology & Behavior, 2012年/Dansinger ML ほか, JAMA, 2005年/Sacks FM ほか, The New England Journal of Medicine, 2009年/Seidelmann SB ほか, The Lancet Public Health, 2018年/Noto H ほか, PLOS ONE, 2013年/Angelotti A ほか, Frontiers in Nutrition, 2024年/厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書, 2024年

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