しょっぱいものを食べた翌日に1kg増えるのはなぜか

「ラーメンを食べた翌日、1kg増えてました」

日吉の体験トレーニングで、実際にうかがった言葉です。食事を整えているのに、一食のしょっぱいもので体重計の数字が跳ね返る。数週間の努力が一晩で帳消しになったように見えて、翌日から極端に食べる量を減らしてしまう。この記事では、その1kgの正体を管理下の研究の数字で分解します。塩分を増やすと体重は何kg動くのか、体内のナトリウムは本当に24時間単位で出入りしているのか、日本人の摂取量は目標量とどれだけ離れているのかを見ていきます。

射程をはっきりさせます。扱うのは、健康な方の短期的な体重変動と、日常的な減塩の考え方です。高血圧や腎疾患で治療中の方、利尿薬や降圧薬を服用中の方は、主治医や管理栄養士の指示が最優先です。この記事の数字を理由に、自己判断で服薬をやめたり極端な減塩に踏み込んだりしないでください。原典で確認できなかった数字は書きません。結果が割れている論点は、正直に書きます、と前置きして両方を示します。

塩分を変えると、体重は何kg動くのか

いちばん近い数字から見ます。HeerらがBritish Journal of Nutrition(2009年)に報告した「Salty Life 6」です。健康な男性9名(平均25.7歳、体重71.4kg)を管理下に置き、28日間で食塩量だけを4段階に切り替えました。低塩(体重1kgあたり0.7mmolのNaCl)6日、通常量(2.8mmol)6日、高塩(7.7mmol)10日、再び低塩6日。71.4kgの人で1日約3g、12g、32gです。

低塩から通常量に切り替えただけで、体重は1.0±0.1kg増えました。さらに高塩に上げると追加で0.5±0.2kg。エネルギー量は管理されていますから、この1.0kgも0.5kgも脂肪ではありません。塩分の量だけを動かして、体重が1kg動いたのです。

もっと短い時間でも測られています。Van RegenmortelらのBritish Journal of Anaesthesia(2017年、MIHMoSA試験)では、健康な成人12名にクロスオーバー法で48時間の輸液を行いました。ナトリウム量の差は約347mmol、食塩換算で約20g。48時間後に体内に残った水分の差は約590mL、体重変化の差も約586gでした。食塩を20g多く入れると、48時間で体重が約0.59kgぶん違って出ます。

ここで正直に書きます。この話は一枚岩ではありません。同じHeerらのAmerican Journal of Physiology - Renal Physiology(2000年)の研究では、飲水量を固定した健康な男性で食塩を1日15gまで増やしても、細胞外液量は安定したままで体液貯留は起きませんでした。塩分を増やせば必ず水が溜まる、という単純な図式ではありません。

体内のナトリウムは、週と月のリズムで動く

RakovaらがCell Metabolism(2013年)に報告したMars500研究は、火星飛行を模した閉鎖環境に男性を隔離し、食事を完全に管理した実験です。105日間の予備試験と、520日間のうち最初の205日間、食塩を1日12g、9g、6gと段階的に下げ、各段階を最低29日維持しました。

従来の教科書は、摂ったナトリウムは24時間で尿に出ると説明してきました。実際、摂取量のおよそ95%は尿に出ていました。ただし「毎日均等に」ではありません。排泄は週単位のリズムで揺れ、体内にナトリウムが貯まる期間が生まれます。さらに総ナトリウム量は月単位、あるいはそれ以上の周期で変動し、しかもこの貯蔵は体重増加を伴っていませんでした。

つまり、体重を1日単位で評価しても、体は1日単位で動いていない。解説論文(American Journal of Kidney Diseases、2017年)は、Mars500で最も高い食塩量に切り替えた後、体液量は2週間でベースラインに戻った一方、血圧は4週間かけて上がったと記述しています。水の話と血圧の話は、時間軸が違うのです。

塩分は喉を渇かせるのか、食欲を増やすのか

ここも正直に書きます。結果が割れています。

RakovaらがJournal of Clinical Investigation(2017年)に報告した解析では、健康な男性10名に食塩6g・9g・12gの各段階を最低29日ずつ、水分は自由に飲める条件で観察しました。予想に反して、食塩6g/日の期間のほうが12g/日の期間より、1日あたり293±27mL多く水を飲んでいました。尿の浸透圧は高塩分期に上がり、体は尿を濃縮して水を節約していたのです。体重はアルドステロンが高い局面で0.41±0.10kg増える変動を見せました。関連論文(Kitadaら、同誌2017年)は、この節約が飲水ではなく代謝の組み替えで達成されたと報告しています。

一方、JuraschekらがHypertension(2020年)に報告したDASH-Sodium試験の解析は逆向きです。血圧がやや高めの成人412名に、ナトリウム1日1,150mg・2,300mg・3,450mg(食塩換算で約2.9g・5.8g・8.8g)の食事を各4週間提供したところ、ナトリウムが多いほど喉の渇きは強くなり、対照食では尿量も体重もわずかに増えました。そしてエネルギー摂取量はナトリウム量によって変わりませんでした。

「塩分を摂ると食欲が増えてカロリーが増える」という説明は、412名の試験では支持されませんでした。塩分が問題なのは、カロリーではありません。

日本人は今、どれくらい摂っているのか

厚生労働省の令和6年「国民健康・栄養調査」(2024年実施)によると、20歳以上の食塩摂取量の平均値は1日9.6g。男性10.5g、女性8.9gです(解析対象は男性7,225人、女性8,491人)。12年間で最も低い値ですが、まだ高い。女性は20代の8.3gから60代の9.3gへ、年齢とともに増えます。日本人の食事摂取基準(2025年版)の目標量は、成人男性7.5g未満、女性6.5g未満です。

高血圧および慢性腎臓病(CKD)の重症化予防のための量は男女とも6.0g未満、健康日本21(第三次)の目標値は7gです。WHOはさらに厳しく、成人はナトリウム1日2,000mg未満(食塩5g未満)を推奨し、過剰なナトリウム摂取に関連する死亡を年間約170万人と推計しています。

かけうどん1杯に5.6g

女性の平均8.9gと目標量の差は2.4g。どこから入るかを見れば、埋め方が見えます。農林水産省が示す例では、かけうどん1杯で食塩約5.6g、おでん約3.8g、にぎり寿司(つけ醤油を除く)約3.7g、ミックスサンドイッチ約3.2g、ウインナーソテー約1.1gです。

かけうどん1杯で、女性の目標量6.5gの約86%を使い切ります。汁を半分残せば、かなりの量が戻る。逆に、家庭で塩を振る手を我慢しても、麺類の汁を毎回飲み干していれば相殺されます。減塩は味つけを薄くするより先に、汁・加工品・外食の頻度を見るほうが効率的です。

減塩で血圧は何mmHg下がるのか

塩分を気にする本来の理由は血圧です。He、Li、MacGregorがBMJ(2013年)に報告したメタ解析は34試験・3,230名を統合しました。食塩を1日平均4.4g減らすと、高血圧の方(22試験・990名)で収縮期血圧が5.39mmHg、拡張期が2.82mmHg低下。正常血圧の方(12試験・2,240名)でも収縮期2.42mmHg、拡張期1.00mmHg低下しました。体重計は水で動きますが、血圧はゆっくり、確かに動きます。

では、どうするか

  • しょっぱいものを食べた翌日は、体重を判断材料にしない。評価するなら7日間の平均値どうしを比べてください。
  • 翌日に食事を抜かない。水を控えない。48時間で0.59kg動く話に、絶食や水分制限で応じる必要はありません。高塩分時、体はすでに尿を濃縮して水を節約しています。
  • 減らす順番を決める。麺類の汁、漬物・加工肉・練り物、外食の頻度。この3つを見直すだけで、多くの方は2〜3gが動きます。カリウムを含む野菜・果物・いも類を増やすほうが、塩を我慢するより続きます。

味の慣れにも触れておきます。「薄味に慣れるまで何週間かかるか」を調べましたが、原典で対象者数や期間を確認できる研究にたどり着けませんでした。ですので数字は書きません。繰り返しますが、高血圧や腎疾患の治療中の方、利尿薬を使っている方は主治医の指示が優先です。極端な減塩を自己判断で始めないでください。

よくある質問

ラーメンの翌日に1kg増えていたら、脂肪が増えたのですか

いいえ。食塩だけを変えた研究では、低塩から通常量に戻すだけで体重が1.0kg増えています。エネルギー量は管理されていますから、これは水分です。48時間で約0.59kg動いた報告もあります。翌日の数字は判断材料にせず、7日間の平均で見てください。

塩分を摂ると食欲が増えて太りますか

412名に4週間ずつ食事を提供したDASH-Sodium試験の解析では、ナトリウム量を1,150mgから3,450mgまで変えてもエネルギー摂取量は変わりませんでした。喉の渇きは強くなりました。塩分が問題なのはカロリーではなく、血圧のほうです。

減塩すると血圧はどれくらい下がりますか

34試験3,230名のメタ解析では、食塩を1日4.4g減らすと高血圧の方で収縮期血圧が5.39mmHg、正常血圧の方でも2.42mmHg下がりました。ただし治療中の方は主治医の指示が優先で、自己判断での極端な減塩はおすすめしません。

参考:日吉のCLEAN.の場合

CLEAN.は日吉駅 西口から徒歩3分の、女性専用・完全個室のパーソナルジムです。男性は法人契約と、既存会員様からのご紹介のみとさせていただいています。ウェア・シューズ・タオル・水はすべて無料で貸し出しますので、手ぶらで通っていただけます。

月額プランには、毎日のLINE食事指導と、10日ごとのフィードバックが含まれます。「翌日の1kg」は、毎日のやりとりがあるからこそ、その場で切り分けられます。10日ごとという間隔も、1日単位の数字に振り回されないためのものです。体調や持病に関わることは、まず受診をお願いしています。

料金は月4回コース42,000円(税込46,200円)、月8回コース72,000円(税込79,200円)、24回分の回数券211,200円(税込232,320円・有効期限180日/LINEの食事指導は含まれません)。入会金は30,000円(税込33,000円)で、これ以外の追加料金はありません。選び方は3つのプランの違いと料金・プランのページをご覧ください。

血圧や腎機能について指導を受けている方は、その内容を優先して計画を組みます。日吉まで通うのが難しい方には、オンラインでのご案内もあります。

まとめ

しょっぱいものを食べた翌日の1kgは、ほぼ水です。食塩だけを動かした9名の管理試験で、低塩から通常量に戻すだけで体重は1.0±0.1kg増えました。48時間で食塩を約20g多く入れた試験では、体重差が約0.59kg。脂肪はこの速さでは動きません。

体は1日単位でナトリウムを処理していません。Mars500では摂取量の約95%が尿に出るものの、排泄は週単位で揺れ、総ナトリウム量は月単位で変動していました。体液量は2週間で戻る一方、血圧は4週間かけて上がったとも報告されています。翌日の体重は、情報として弱いのです。日本人の平均は1日9.6g(男性10.5g、女性8.9g)、目標量は男性7.5g未満・女性6.5g未満、WHOは5g未満。女性の差は2.4gです。かけうどん1杯が5.6gであることを思えば、汁を残すだけでも距離は縮まります。

減塩の本当の見返りは、体重計ではなく血圧です。34試験3,230名のメタ解析で、食塩4.4g減により収縮期血圧は高血圧の方で5.39mmHg、正常血圧の方でも2.42mmHg下がりました。翌日の1kgに落ち込む必要はありません。汁を半分残すことを、来週も再来週も続けてください。

詳しくは横浜のオンラインパーソナルトレーニング・オンライン食事指導(CLEAN.Online)をご覧ください。食事のご相談だけでも承ります。

- CLEAN.

出典

Heer M ほか, British Journal of Nutrition, 2009/Heer M ほか, American Journal of Physiology - Renal Physiology, 2000/Van Regenmortel N ほか, British Journal of Anaesthesia, 2017/Rakova N ほか, Cell Metabolism, 2013/Rakova N ほか, Journal of Clinical Investigation, 2017/Kitada K ほか, Journal of Clinical Investigation, 2017/Juraschek SP ほか, Hypertension, 2020/He FJ, Li J, MacGregor GA, BMJ, 2013/解説論文(著者名は確認できず), American Journal of Kidney Diseases, 2017/厚生労働省, 令和6年 国民健康・栄養調査結果の概要, 2025/厚生労働省, 日本人の食事摂取基準(2025年版), 2024/World Health Organization, Sodium reduction fact sheet, 2026/農林水産省, 食塩の取りすぎに注意

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