秋から冬にかけて体重が増えるのはなぜか

「毎年、秋から春までに3kg増えるんです」

日吉の体験トレーニングで、10月に入ってからこの言葉を何度かうかがいました。夏は保てていた体重が秋のどこかで動き出し、気がつくと春になっている。この記事は、その実感を否定するものでも、「やはり冬は太る」と追認するものでもありません。実際に測られたデータが、どこまで言えてどこから先を言えないのかを並べます。

扱うのは、体重の季節変動の実測、祝祭期間の増加量、増えた分が戻るのか、身体活動量と食事量の季節差、日照と食行動、寒さと代謝です。出典に挙げるのは、今回実際に開いて確認できた研究だけです。裏づけを確認できなかった説明は「確認できませんでした」と書き、数字も確認できたものだけを書きます。

実測された季節の増え幅は、思っているより小さい

Ma らが European Journal of Clinical Nutrition に2006年に報告した研究では、米国の20歳から70歳までの593人を1年間、四半期ごとに追跡しました。体重の年間の変動幅はおよそ0.5kgで、最も重いのは冬でした(冬と夏の比較で P<0.001)。身体活動は冬に最も低く、春に最も高くなっています。

祝祭期間だけを切り出した研究もあります。Yanovski らが New England Journal of Medicine に2000年に報告したもので、成人195人を実測したところ、11月中旬から1月中旬の増加は平均0.37kg(標準偏差1.52kg、P<0.001)、その前の期間には有意な増加がありませんでした。論文はこれを「一般に言われる増加量より少ない」とまとめています。

ここは正直に書きます。「秋から春で3kg」という実感と、実測の0.4kgから0.5kgは桁が違います。体感が大きめに見積もられているという読み方と、平均が小さくても個人差が大きいという読み方の両方が成り立ちます。標準偏差は1.52kgと平均の4倍で、ほとんど増えない人とはっきり増える人が同じ平均に同居しています。

増え幅が小さいのに問題になるのは、戻り切らないからです

この研究で重要なのは、その後の追跡です。祝祭期間に平均0.37kg増えたあと、2月下旬から3月の時点で参加者の体重は開始時より平均0.48kg重いままで、その後も翌年の秋まで有意な変化はありませんでした。増えた分は、春が来ても自然には戻らなかったということです。

この0.48kgを年数で掛け算したくなりますが、追跡されたのは1年強で、同じペースが10年続くかは分かりません。ここは、断定しないほうが誠実な領域です。言えるのは、1年という単位では自然に戻らなかったということまでです。

なお、体重計のログを使った国際比較として、Helander、Wansink、Chieh の報告が New England Journal of Medicine の2016年、375巻12号に掲載され、米国・ドイツ・日本の3か国を扱っています。ここも正直に書きます。抄録の付かない短報のため、参加者数や国ごとの増加率は今回確認できませんでした。確認できていない数字は書けませんので、報告の存在のみをお伝えします。

動く量は、季節ではっきり変わります

増える理由の側には、強いデータがあります。Turrisi らが International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity に2021年に発表したレビューは、110本の論文、118,189人、30か国を対象に、機器で測定された身体活動の季節差を整理しています。

  • 身体活動量が夏のほうが多かったのは、30研究中23研究、約77%の比較でした
  • 冬のほうが多かったのは1研究のみ(3.3%)です
  • 中強度以上の活動時間では、19の比較のうち11、約58%で夏が上回りました
  • 座位時間は逆で、13の比較のうち10、77%で冬のほうが長くなっていました

自己申告ではなく機器で測った値で、これだけ一貫した方向が出ています。日吉での生活に引き直せば、夏に自然に稼げていた徒歩の移動や休日の外出が、寒くなるにつれて静かに削られます。運動をやめた記憶はないのに活動量だけが減っている状態です。

食べる量の季節差は、1日86kcalでした

先ほどの Ma らの研究では、1日あたりの摂取エネルギーが秋は春より86kcal高いという結果が出ています。ただし体脂肪に換算して「これだけ太る計算です」と書くのはやりすぎです。同じ研究が実測した変動幅は約0.5kgで、摂取の差から計算される値とは一致しません。

よく言われる「秋は体が脂肪を蓄えようとする」については、はっきり書いておきます。ヒトで秋に脂肪の蓄積が生理的に促進されることを示した研究は、今回確認できませんでした。実測の裏づけを持つのは、活動量が減ることと摂取が1日86kcal増えることという、地味な二つのほうです。

光、気分、そして食行動

Kurlansik と Ibay が American Family Physician の2012年、86巻11号に書いたレビューによれば、米国では人口の約5%が季節性感情障害を経験し、症状は1年の約40%の期間にわたります。厳密な診断基準での有病率は約1%から2%です。炭水化物への渇望と過食はしばしば伴う症状ですが、著者らは、症状があること自体は診断の根拠にならないと但し書きを付けています。

日照については、公的データも見ておきます。気象庁の横浜の平年値(1991年から2020年)では、月間日照時間が最も短いのは10月の137.3時間、次いで9月の141.2時間、11月の151.1時間です。真冬の1月は192.7時間あります。平均気温は9月23.7度、10月18.5度、11月13.4度、12月8.7度、1月6.1度と素直に下がります。

ここも正直に書きます。「冬は暗いから食べてしまう」は、横浜の日照時間とは素直に噛み合いません。最も日照が乏しいのは秋の入り口です。ただし日照時間と日の長さは別の指標で、冬に日の入りが早いことは変わりません。ここも、断定しないほうが誠実な領域です。

「冬は代謝が上がるから痩せやすい」は本当か

Yoneshiro らが Journal of Clinical Investigation の2013年、123巻8号に報告した研究は、日本人男性51人(平均24.4歳、BMI 22.0)を17度の環境に1日2時間、6週間曝露しました。

  • 褐色脂肪組織の活性は 2.46 から 3.89 へ上昇しました(P=0.001)
  • 寒冷による熱産生は、1日あたり 108.4kcal から 289.0kcal へ増加しました(P<0.05)
  • 脂肪量は介入群 −0.70kg、対照群 +0.03kg でした(P<0.05)

寒冷刺激がエネルギー消費を増やしうることは示されています。ただしこれは17度に毎日2時間、意図的に身を置く介入です。暖房の効いた室内で過ごす日本の冬が同じ刺激になるとは言えません。加えて、自由に生活する人の総エネルギー消費量が季節で変わるかを二重標識水法で比べた研究は、今回確認できませんでした。「冬は自然に代謝が上がるので痩せやすい」を裏づけることはできません。ここは、断定しないほうが誠実な領域です。

10月から3月までを、どう設計するか

Mason らが BMJ の2018年、363巻 k4867 に報告したランダム化比較試験は、英国の成人272人(各群136人)に、クリスマス期間の体重増加を防ぐ簡単な行動介入を試しました。介入群の体重変化は−0.13kg(95%信頼区間 −0.4 から 0.15)、対照群は+0.37kg(同 0.12 から 0.62)、群間差は−0.49kg(同 −0.85 から −0.13、P=0.008)です。

対照群の0.37kgは、Yanovski らが米国で観測した0.37kgとほぼ同じで、介入群では増加が起きていません。秋から冬の増加は、簡単な行動介入で防がれていたということです。10月のいま、やることは三つです。活動量の季節減を前提に屋内の運動枠を先に確保すること。摂取の増加は1日86kcalの規模なので、把握できていれば足りること。そして、0.4kgから0.5kgの変化は同じ条件で測らなければ検出できないので、測ることです。

よくある質問

秋から冬にかけて、実際には何kg増えるのですか。

実測値は体感より小さいです。593人を1年追跡した研究では体重の年間の変動幅は約0.5kgで、冬に最も重くなりました。195人を追跡した別の研究では、11月中旬から1月中旬の増加は平均0.37kgでした。3kgという実感とは開きがあります。

冬は代謝が上がるから痩せやすい、というのは本当ですか。

断定できません。日本人男性51人が17度の環境に1日2時間、6週間入った研究では、寒冷による熱産生が1日あたり108.4kcalから289.0kcalに増えました。ただしこれは意図的な寒冷曝露であり、暖房のある冬の生活とは別の話です。

増えた体重は、春になれば自然に戻りますか。

戻り切らないという報告があります。195人の研究では祝祭期間に平均0.37kg増えた後、2月下旬から3月の時点でも開始時より0.48kg重いままで、その後は翌年の秋まで有意な変化がありませんでした。

参考:日吉のCLEAN.の場合

CLEAN. は日吉駅の西口から徒歩3分にある、女性専用・完全個室のパーソナルジムです。男性のご利用は、法人契約と既存会員様からのご紹介のみとさせていただいています。冬に減るのは屋外での活動です。完全個室で天候に左右されず通える点は、10月からの数か月にそのまま意味を持ちます。

ウェア、シューズ、タオル、水はすべて無料で貸し出しますので、手ぶらで通っていただけます。寒くなると準備が億劫になり、それが通わない理由になります。持ち物を減らしておくのは、その摩擦を先に取り除くためです。

月額プランには、毎日のLINEでの食事指導と、10日ごとのフィードバックが含まれます。1日86kcalの変化は、10日単位で見返す仕組みがあってはじめて把握できます。料金は月4回コースが42,000円(税込46,200円)、月8回コースが72,000円(税込79,200円)です。24回分の回数券は211,200円(税込232,320円)で、有効期限は180日、こちらにLINEの食事指導は含まれません。入会金は30,000円(税込33,000円)で、これ以外の追加料金はいただきません。

どのプランが合うかは、3つのプランの違いと料金・プランのページをご覧ください。

まとめ

秋から冬に体重が増えることは実測されています。593人の1年追跡では年間の変動幅は約0.5kg、最も重いのは冬でした。195人の追跡では11月中旬から1月中旬の増加が平均0.37kgです。ただし標準偏差は1.52kgと平均の4倍あります。

この0.37kgが問題になるのは、量が大きいからではなく戻らないからです。同じ研究で、参加者は2月下旬から3月の時点で開始時より0.48kg重いままで、その後翌年の秋まで有意な変化はありませんでした。春に自然に戻るという前提に、裏づけはありません。

理由として最も裏づけが厚いのは活動量です。118,189人、30か国、110本の論文を整理したレビューでは、身体活動は約77%の比較で夏が多く、座位時間は77%の比較で冬が長くなっていました。食事は、秋が春より1日86kcal多い規模です。一方で「秋は体が脂肪を蓄えようとする」「冬は代謝が上がるから痩せやすい」は、裏づけを確認できませんでした。17度に1日2時間、6週間という寒冷曝露が熱産生を108.4kcalから289.0kcalに増やした研究はありますが、暖房のある冬とは別の話です。

そして、防げることも確かめられています。英国の272人の試験では、対照群が0.37kg増えたのに対し、簡単な行動介入を受けた群は−0.13kg、群間差は0.49kgでした。屋内の枠を確保し、摂取を86kcalの精度で把握し、同じ条件で測る。この三つで、来年3月の数字は変わります。

日吉まで通うのが難しい方、ご自宅で同じ設計を進めたい方には、オンラインでのご案内もあります。横浜のオンラインパーソナルトレーニング・オンライン食事指導(CLEAN.Online)をご覧ください。冬に屋外へ出る回数が減ること自体は変えられなくても、屋内で何をするかは設計できます。

- CLEAN.

出典

Yanovski JA ほか, New England Journal of Medicine, 2000/Helander EE ほか, New England Journal of Medicine, 2016/Ma Y ほか, European Journal of Clinical Nutrition, 2006/Turrisi TB ほか, International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity, 2021/Kurlansik SL ほか, American Family Physician, 2012/Yoneshiro T ほか, Journal of Clinical Investigation, 2013/Mason F ほか, BMJ, 2018/気象庁, 地点別平年値(横浜), 1991〜2020年

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