ダイエットに有酸素運動は必要か。筋トレとの順番と配分

「筋トレのあとに有酸素、どれくらいやればいいですか」

日吉の体験トレーニングで、実際にうかがった言葉です。この質問には前提が折り重なっています。有酸素はやったほうがいい、けれど筋トレほど優先度は高くない、だから順序と分量の話になる。その前提はおおむね正しいのですが、理由は少し違います。

この記事では、有酸素運動の役割を、実際に確認できた研究だけで整理します。運動単独でどれだけ減るのか、消費を増やしても総消費が比例して増えない現象、有酸素が筋トレを阻害するかどうか、同じ日にやるときの順番、公的ガイドラインが示す量まで。結論を先に言えば、有酸素は「不要」でも「必須」でもありません。何を目的にするかで置き場所が変わるだけです。数字で見ていきます。

運動だけで減る体重は、思ったより小さい

ジェイエディらがJAMA Network Openに2024年に発表した用量反応メタ解析は、過体重・肥満の成人を対象とした116件のRCT、6,880人をまとめています。有酸素運動は週30分増えるごとに体重が0.52kg減り、週150分で2.79kg、週300分で4.19kgの減少でした。体脂肪率は週150分で2.08%の低下です。ただし、臨床的に意味のある変化(ウエスト2cm、体脂肪率2%)に届くには中強度以上で週150分超が必要でした。

ジョンズらがJournal of the Academy of Nutrition and Dieteticsに2014年に発表した直接比較のメタ解析では、食事と運動を組み合わせたプログラムは運動のみより3〜6か月で5.33kg、12か月で6.29kg多く減りました。一方、食事のみとの差は3〜6か月で0.62kgと有意でなく、12か月でようやく1.72kgです。

運動を足しても食事介入に1〜2kgしか上乗せできないのに、食事を足すと運動単独に5〜6kg差がつく。ウーらがObesity Reviewsに2009年に発表した18試験1,636人の解析でも、食事+運動の上乗せは長期で1.14kgでした。上乗せはある。ただし控えめです。

消費カロリーは、足し算では増えない

ポンツァーらがCurrent Biologyに2016年に発表した研究は、ガーナ、南アフリカ、セーシェル、ジャマイカ、米国の5集団332人を調べました。総エネルギー消費量は活動量に比例せず、中等度の活動レベルを超えたあたりで頭打ちになります。変化点は230 CPM/日(95%信頼区間44〜428)で、それを超えると活動量が100 CPM/日増えても総消費は50kcal/日も増えません。活動量が最低の層と最高の層で、総消費の差はわずか15%。制約モデルと呼ばれる考え方です。

個人レベルで定量化したのが、カロウ、ハルシー、ポンツァーらがCurrent Biologyに2021年に発表した1,754人の解析です。運動で増やした消費のうち平均28%が基礎代謝の低下で相殺されていました。しかも代償は体脂肪量と関係し、BMIが低いほう(10パーセンタイル)で27.7%、高いほう(90パーセンタイル)で49.2%。増やした消費の約半分が消える計算です。

「運動しても無駄」という話ではありません。代償が28%でも残り72%は積み上がります。ただ、増やすほど比例して痩せるという期待は、身体の仕組みに合っていません。

有酸素・筋トレ・併用で、変わるものが違う

ウィリスらがJournal of Applied Physiologyに2012年に発表したSTRRIDE AT/RT試験は、運動習慣のない過体重・肥満の成人119人を有酸素のみ、筋トレのみ、併用に分け8か月追跡しました。有酸素群と併用群は体重と脂肪量を減らし、筋トレ群と併用群は除脂肪量を増やしました。注目すべきは、併用群が脂肪量の減少で有酸素単独を有意に上回らなかったことです。時間は2倍なのに、脂肪の減り方は同じでした。

ハラフィらがHealthcareに2025年に発表した中高年対象の53研究2,873人のメタ解析も同じ絵です。併用と有酸素単独では体脂肪率の差は0.30%、脂肪量の差は0.01kgでいずれも有意差なし。一方、除脂肪量は併用が0.51kg有利でした。併用と筋トレ単独では三つとも有意差なしです。

ウェウェジらがSports Medicineに2022年に発表した58研究3,058人の解析では、筋トレ単独でも体脂肪率が1.46%、脂肪量が0.55kg減り、内臓脂肪も有意に減っていました。

つまり、両方やっても脂肪の減りはあまり上乗せされず、上乗せされるのは除脂肪量です。「有酸素を足すと痩せる」のではなく「筋トレを足すと減った体重の中身が変わる」と考えるほうが実態に近いと言えます。

有酸素は筋トレの成果を阻害するか

シューマンらがSports Medicineに2022年に発表したメタ解析は、43研究1,090人(併行群590人、筋トレのみ500人)で干渉効果を検証しています。

  • 筋肥大:効果量 -0.01(95%信頼区間 -0.16〜0.18、p=0.919)。干渉なし
  • 最大筋力:効果量 -0.06(-0.20〜0.09、p=0.446)。干渉なし
  • 爆発的筋力:効果量 -0.28(-0.48〜-0.08、p=0.007)。有意な低下

低下したのは爆発的筋力だけで、しかも実施のしかたに依存します。同一セッション内では効果量-0.31(p=0.043)でしたが、3時間以上あけると有意差が消えました。有酸素の様式(自転車かランニングか)、頻度、トレーニング歴、年齢では差が出ていません。「有酸素をやると筋肉がつかない」という心配は、一般的なダイエット目的ではほぼ無用です。

同じ日にやるなら、筋トレが先

エデンス、ヴァン・ソメレン、ハワトソンがSports Medicineに2018年に発表したメタ解析は、10研究245人で同一セッション内の順序だけを比較しました。筋トレ→有酸素の順は、逆順より下肢の動的筋力で6.91%有利(p=0.006)。一方、下肢の筋肥大は1.15%で有意でなく(p=0.40)、有酸素能力の改善も順序で差がありません(p=0.83)。

冒頭の「筋トレのあとに有酸素」は理にかなっています。ただし差が出たのは筋力の指標だけで、体脂肪の減り方で順序を気にする根拠はありません。

HIITと中強度、時間あたりの効率

ヴィアナらがBritish Journal of Sports Medicineに2019年に発表したメタ解析は、36研究1,012人でインターバルと中強度持続を比較しました。ここは指標で結果が割れるので、正直に書きます。体脂肪率の減少には有意差なし。一方、絶対的な脂肪量(kg)ではインターバルが28.5%大きい減少で、特にスプリントインターバルで差が出ました。著者らは、より短い時間で同等の効果が得られると述べています。

時間が限られている方にHIITが選択肢になるのは確かです。ただし強度が高いぶん、続けられるかは別問題です。

ガイドラインが示している量

ブルらがBritish Journal of Sports Medicineに2020年に発表したWHOのガイドラインは、18〜64歳の成人に週150〜300分の中強度有酸素活動、または週75〜150分の高強度活動と、主要筋群を対象とした中強度以上の筋力向上運動を週2日以上を推奨しています。

厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」は、成人について3メッツ以上の身体活動を1日60分以上(週23メッツ・時以上)、3メッツ以上の運動を週60分以上(週4メッツ・時以上)、筋力トレーニングを週2〜3日とし、歩数の目安を1日約8,000歩以上としています。

どちらも有酸素と筋トレの両方を挙げています。歩数の目安にも裏づけがあります。パルークらがThe Lancet Public Healthに2022年に発表した15コホート約5万人のメタ解析では、歩数が上位3四分位の人は最少群より死亡リスクが40〜53%低い一方、関連は60歳以上で1日6,000〜8,000歩、60歳未満で8,000〜10,000歩で頭打ちになりました。

では、配分をどう決めるか

  • 減量の主役は食事。運動の上乗せは1〜2kg程度(ジョンズ2014、ウー2009)
  • 有酸素単独でも週150分で2.79kg、週300分で4.19kg減(ジェイエディ2024)
  • 増やした消費の28%、体脂肪が多い方では49.2%が代償される(カロウ2021)
  • 筋トレを足しても脂肪の減りは変わらず、増えるのは除脂肪量0.51kg(ハラフィ2025)
  • 有酸素は筋肥大も最大筋力も阻害しない(シューマン2022)

実務的な結論はこうです。減量の枠組みは食事で作る。筋トレを週2〜3日、主要筋群に確保する。有酸素はそれを削らない範囲で、週150分に向けて日常の歩数から積み上げる。同じ日にやるなら筋トレのあと。この配分なら、干渉効果も代償の問題も実質的に避けられます。

逆に「有酸素を増やすほど痩せる」方向に時間を投じるのは、効率の悪い賭けです。総消費も、歩数と死亡率の関係も頭打ちになります。増やして確実に返ってくるのは、除脂肪量と続けられる習慣のほうです。

よくある質問

ダイエットに有酸素運動は必要ですか

体重を減らす主役は食事です。ジェイエディらの116試験のメタ解析では有酸素単独でも週150分で2.79kg、週300分で4.19kg減りましたが、体感できる変化には週150分超が必要でした。不要ではなく、食事を土台にした上での上乗せとして有効です。

筋トレと有酸素は、どちらを先にやるべきですか

同じセッション内で行うなら筋トレが先です。エデンスらの10研究245人のメタ解析では、筋トレを先にした順序が下肢の動的筋力で6.91%有利でした。筋肥大と有酸素能力は順序で差が出ていないので、目的が筋力なら順番を守ってください。

有酸素運動をすると筋肉は減りますか

シューマンらの43研究1,090人のメタ解析では、筋肥大も最大筋力も有酸素の併用で低下しませんでした。低下したのは爆発的筋力だけで、同一セッションでは効果量マイナス0.31、3時間以上あければ差が消えています。一般的なダイエットでは心配は要りません。

参考:日吉のCLEAN.の場合

CLEAN.は日吉駅西口から徒歩3分、女性専用・完全個室のパーソナルジムです。男性は法人契約と、既存会員様からのご紹介のみとさせていただいています。ウェア・シューズ・タオル・水はすべて無料で貸し出しますので、手ぶらで通えます。荷物を理由に回数が減るのは、もったいない話です。

月額プランには、毎日のLINE食事指導と、10日ごとのフィードバックが含まれます。減量の枠組みを作るのは食事です。週1回や週2回のセッションで扱えるのはトレーニングの部分だけで、残りの日々はその外側にあります。毎日のやりとりを組み込んでいるのは、そのためです。

料金は、月4回コースが42,000円(税込46,200円)、月8回コースが72,000円(税込79,200円)。24回分の回数券は211,200円(税込232,320円)で、有効期限は180日、LINEの食事指導は含まれません。入会金は30,000円(税込33,000円)、これ以外の追加料金はありません。

どのプランが合うかは、通える頻度と食事のサポートの要否で変わります。3つのプランの違いと料金・プランのページに、それぞれの想定をまとめています。

まとめ

有酸素運動は必須ではありませんが、不要でもありません。ジョンズらの直接比較では、食事と運動の併用は運動のみより12か月で6.29kg多く減った一方、食事のみとの差は1.72kgでした。ウーらの解析でも、食事に運動を足した上乗せは長期で1.14kgです。主役は食事だと数字が示しています。

それでも有酸素をやる意味はあります。ジェイエディらの116試験6,880人の解析では、有酸素単独でも週150分で2.79kg、週300分で4.19kg減りました。ただし増やした消費の平均28%は代償され、体脂肪が多い方では49.2%まで大きくなります。量と減量は比例しません。

配分については、ハラフィらの53研究2,873人の解析が明快です。有酸素に筋トレを足しても脂肪量の差は0.01kgで、変わったのは除脂肪量の0.51kgでした。シューマンらの解析では有酸素は筋肥大も最大筋力も阻害せず、エデンスらの解析は同一セッションなら筋トレ先行が下肢の動的筋力で6.91%有利だと示しています。

WHOは週150〜300分の中強度有酸素と週2日以上の筋トレを、厚生労働省の2023年ガイドは1日60分以上の身体活動、週60分以上の運動、週2〜3日の筋トレ、1日約8,000歩を挙げています。歩数の効果も60歳未満で8,000〜10,000歩で頭打ちです。やるべき量には上限があり、その上限は思ったより低い。その範囲を食事の土台の上に無理なく置くことが、いちばん確実な道です。

日吉まで通うのが難しい方や、ご自宅での食事管理から始めたい方には、横浜のオンラインパーソナルトレーニング・オンライン食事指導(CLEAN.Online)もあります。画面越しのトレーニングと食事のサポートを組み合わせて、この記事の配分をご自身の生活に落とし込むお手伝いをしています。

- CLEAN.

出典

Jayedi A, Soltani S, Emadi A, Zargar MS, Najafi A, JAMA Network Open, 2024/Johns DJ ほか, Journal of the Academy of Nutrition and Dietetics, 2014/Wu T, Gao X, Chen M, van Dam RM, Obesity Reviews, 2009/Willis LH, Slentz CA, Bateman LA ほか, Journal of Applied Physiology, 2012/Khalafi M ほか, Healthcare, 2025/Pontzer H, Durazo-Arvizu R, Dugas LR ほか, Current Biology, 2016/Careau V, Halsey LG, Pontzer H ほか, Current Biology, 2021/Schumann M, Feuerbacher JF, Sünkeler M ほか, Sports Medicine, 2022/Eddens L, van Someren K, Howatson G, Sports Medicine, 2018/Viana RB, Naves JP, Coswig V ほか, British Journal of Sports Medicine, 2019/Wewege MA, Desai I, Honey C ほか, Sports Medicine, 2022/Bull FC ほか, British Journal of Sports Medicine, 2020/Paluch AE ほか, The Lancet Public Health, 2022/厚生労働省, 健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023, 2024

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