更年期に体重が増えるのはなぜか。閉経と加齢を分けて考える

「同じ生活をしているのに、去年から急に増えたんです」

日吉の体験トレーニングで、50代の方からいちばん多くうかがう言葉のひとつです。食べる量も歩く距離も去年と変わらない。それなのに体重計の数字が動いた、あるいは数字は動かないのに服のサイズが合わなくなった。ご自身の意志が弱くなったのではないかと、ご自分を責める方が少なくありません。

この記事では、更年期に体重や体型が変わる理由を、確認できた研究の数字だけで整理します。先に申し上げると、この分野の結論は一枚岩ではありません。「閉経そのものが太らせる」という説と「増えているのは加齢だ」という説が、どちらも大規模なデータを持って並んでいます。正直に両方書きます。なお、症状がつらい場合は婦人科の受診が選択肢です。この記事は治療の推奨ではありません。

体重計の数字は、実はあまり変わっていない

更年期の体組成を長期に追った代表的な研究が、アメリカのSWAN(Study of Women's Health Across the Nation)です。Greendaleらが2019年にJCI Insightで報告した解析は、1,246人をDXAで繰り返し測定しました。

体重の増える速さは、閉経前が年0.50%、更年期移行期が年0.45%。加速していません。ところが中身は動いていました。脂肪量の増える速さは年1.0%から年1.7%へおよそ2倍になり、同じ時期に除脂肪量(筋肉などの組織)が年0.2%減り始めます。増えるものと減るものが同時に進むため、体重はあまり動きません。

しかも、この変化は永久には続きません。加速するのは最終月経の約2年前から約1.5年後までのおよそ3.5年間で、その後は横ばいに戻ります。体重計が動かないのは、何も起きていないからではなく、中身が入れ替わっているからです。

正直に書きます:「閉経で太るのか」は結論が割れています

「増えているのは加齢によるもの」とする側

Sternfeldらが2004年にAmerican Journal of Epidemiologyで報告したSWANの解析は、3,064人を3年間追跡しました。体重は平均2.1kg、ウエストは平均2.2cm増えていましたが、論文は「閉経の状態が変わったことは体重増加と関連していなかった」と述べています。一方、運動量が1段階(5段階評価)上がるごとに体重は0.32kg少なくなっていました。

Karppinenらが2023年にThe Journal of Clinical Endocrinology & Metabolismで発表した120人の解析では、体組成で補正した安静時エネルギー消費量は年齢1歳につき3.9kcal/日低下していましたが、閉経前後の差は統計的に意味のある大きさではありません(p = 0.78)。結論は「加齢であって閉経ではない」です。

Pontzerらが2021年にScienceで報告した29か国・6,421人のデータでも、体格で補正した1日のエネルギー消費量は20歳から60歳までほぼ横ばいで、下がり始めるのは60歳以降、速度は年0.7%でした。

「閉経そのものの影響がある」とする側

Lovejoyらが2008年にInternational Journal of Obesityで報告した研究は、156人を4年間、毎年測定しました。この間に閉経を迎えた51人では体脂肪・体重・内臓脂肪が有意に増え、睡眠中のエネルギー消費量の低下幅は閉経前のまま経過した人(−5.3%)の1.5倍にあたる−7.9%、脂肪酸化は32%減っていました。閉経前のままだった人に、内臓脂肪の有意な増加はありません。

この研究にはもう一つ、身体活動量が閉経の約2年前から大きく低下し、その後も低いままだったという観察があります。閉経の生理的影響と、その時期に活動量が落ちることは、データの上で絡み合っています。測定方法も人数も違うため、決着はついていません。

ただし「脂肪のつく場所」は、報告がよく一致しています

Greendaleらが2021年に同じThe Journal of Clinical Endocrinology & Metabolismで報告した解析は、380人・のべ3,341回の測定から部位別の変化を推定しています。

  • 内臓脂肪:閉経前は年−1.85%(むしろ減少)→移行期は年+6.24%(95%信頼区間 4.31〜8.17)→閉経後は年+1.47%。12年間の累積で+32.5%
  • アンドロイド脂肪(おなか周り):移行期は年+5.54%、12年累積で+23.7%
  • ジノイド脂肪(おしり・太もも):移行期は年+2.03%、閉経後は年−0.87%
  • ウエスト周囲径:年0.55%→0.96%→0.55%とほぼ直線的

下半身の増え方は緩やかで閉経後はむしろ減り、内臓脂肪とおなか周りは移行期にはっきり加速する。体重は変わらないのに体型だけが変わるという体感には、こういう裏付けがあります。

同じ時期に、骨でも変化が起きています

SWANのファクトシート(引用元はGreendaleら、2012年)によれば、骨密度が速く減る時期は最終月経の1年前に始まり、約3年間続きます。この期間の減少は年におよそ2%、10年の累積で約10%、股関節より脊椎のほうが大きいとされます。同じ3〜4年のあいだに、脂肪は内臓側へ移り、筋肉は減り、骨は最も速く減る時期を通過しています。

レジスタンストレーニングで何が変わるのか

骨について。Mohebbiらが2023年にOsteoporosis Internationalで発表したメタ分析は、閉経後女性の80件・5,581人をまとめ、運動の効果量(SMD)を腰椎0.29(95%信頼区間 0.16〜0.42)、大腿骨頸部0.27、股関節全体0.41と報告しました。小〜中程度ですが、方向は一貫しています。

更年期移行期の女性を対象にしたRCTもあります。Coll-Riscoらが2019年にJournal of Clinical Medicineで報告したFLAMENCOプロジェクトは、150人を16週間(1回60分・週3回)の複合運動群と対照群に分けました。運動群はBMIが0.75kg/m²低下(対照群は変化なし)、アンドロイド脂肪が139g減少(対照群46.1g)、骨盤部の骨塩量が1.13g増加(対照群は2.85g減少)でした。

ただし、量が足りないと効果が出にくいという報告もあります。Nunesらが2024年にJournal of Sport and Health Scienceでまとめた20件のRCT(平均66歳の女性742人)では、週あたりのセット数が多い群のほうが血糖の効果量が大きく(−1.19対−0.78)、CRPも−1.00対−0.34でした。Isenmannらの20週間の試験(2023年、完遂31人)でも、閉経前は筋量が増えた一方、閉経後では同じ効果が出ていません。

ほてり、睡眠、そして活動量

Avisらが2015年にJAMA Internal Medicineで報告したSWANの解析では、頻回の血管運動症状(ほてり・寝汗)があった1,449人で、症状が続く期間の中央値は7.4年、最終月経より後も続く期間は4.5年。日本人女性は4.8年と短めで、移行期の早い段階で始まった人は中央値11.8年以上でした。

Bakerらが2018年にSleep Medicine Clinicsでまとめたレビューによれば、更年期の女性の40〜60%が睡眠の問題を訴えます。閉経前と比べた睡眠障害のオッズ比は移行期1.60、閉経後1.67、手術による閉経2.17。中等度以上のほてりがある人は、夜間に目が覚める割合が約3倍でした。意志の問題ではありません。

ホルモン補充療法と体重について

「ホルモン補充療法をすると太る」という話をよく耳にします。Kongnyuyらによるコクラン・レビュー(Cochrane Database of Systematic Reviews、2000年)は、28件のランダム化比較試験・28,559人をまとめ、体重の差をエストロゲン単独で0.03kg(95%信頼区間 −0.61〜0.67)、黄体ホルモン併用で0.04kg(−0.42〜0.50)と報告しました。いずれもゼロをまたぎ、太る方向にも痩せる方向にも動いていません。

そのうえで、はっきり書いておきます。ホルモン補充療法を行うかどうかは、医師が判断することです。既往歴や年齢、閉経からの年数で適否は変わり、この記事は治療の推奨ではありません。ほてりや不眠など生活に支障が出ている場合は、婦人科の受診が選択肢になります。

日本の数字

厚生労働省の研究班が監修する「女性の健康推進室 ヘルスケアラボ」によれば、日本人女性の平均閉経年齢は50.5歳、更年期は閉経をはさんだ前後10年間です。同省の2022年の意識調査(20〜64歳の5,000人、うち女性2,975人)では、「受診していないが更年期障害の可能性があると思う」が40代で28.3%、50代で38.3%、症状を自覚しても受診していない人は40代で81.7%、50代で78.9%でした。

よくある質問

体重は増えていないのに、おなか周りだけ出てきました。なぜですか。

SWANの報告では、更年期移行期に体重の増える速さは年0.45%と加速しないのに、内臓脂肪は年6.24%のペースで増え、12年で32.5%増えていました。同時に除脂肪量が年0.2%減るため、体重の合計は動きにくくなります。体重計ではなく体型の変化として起きています。

更年期に太るのは、閉経のせいですか。それとも年齢のせいですか。

正直に申し上げると、結論は割れています。3,064人を3年追ったSWANでは閉経の状態変化と体重増加に関連はなく、120人の研究でも安静時代謝の低下は年齢によるもの(1歳あたり3.9kcal/日)でした。一方156人を4年追った研究では、閉経した人で脂肪酸化が32%減っていました。

筋トレは本当に効果がありますか。

骨については、閉経後女性5,581人・80件のメタ分析で腰椎0.29、股関節全体0.41の効果量が報告されています。更年期移行期の150人を対象とした16週間のRCTでは、アンドロイド脂肪が139g減り、骨盤部の骨塩量が1.13g増えました。ただし量が足りないと効果が出にくいという報告もあります。

参考:日吉のCLEAN.の場合

CLEAN.は日吉駅 西口から徒歩3分の、女性専用・完全個室のパーソナルジムです。男性は法人契約と、既存会員様からのご紹介のみとさせていただいています。完全個室ですので、ほてりで汗が出ても、体調に合わせて負荷を落としても、他の方の目に入りません。60代の会員様もいらっしゃいます。

ウェア・シューズ・タオル・水はすべて無料で貸し出しますので、手ぶらで通えます。体調が日によって違う時期は、荷物の準備というひと手間が通う・通わないの分かれ目になります。月額プランには、毎日のLINE食事指導と10日ごとのフィードバックが含まれます。

料金は月4回コースが42,000円(税込46,200円)、月8回コースが72,000円(税込79,200円)、24回分の回数券が211,200円(税込232,320円・有効期限180日/LINEの食事指導は含まれません)、入会金が30,000円(税込33,000円)。これ以外の追加料金はありません。詳しくは3つのプランの違いと料金・プランのページをご覧ください。

なお、体調や痛みに関わることは、まず受診をお願いしています。トレーニングは医療の代わりにはなりません。

まとめ

更年期に起きているのは、体重が増えることよりも中身が入れ替わることでした。1,246人のデータでは、体重の増加ペースは年0.50%から年0.45%とほぼ変わらないのに、脂肪の増える速さは年1.0%から年1.7%へ倍増し、除脂肪量は年0.2%減り始めます。内臓脂肪は年6.24%で増え、12年で32.5%。骨密度は最終月経の1年前から約3年間、年およそ2%で減ります。

「閉経のせいか、年齢のせいか」は結論が出ていません。3,064人の研究では閉経の状態変化と体重増加に関連はなく、6,421人のデータでも補正後のエネルギー消費量は20歳から60歳まで横ばい。一方で156人を4年追った研究では、閉経した人で睡眠中のエネルギー消費が−7.9%、脂肪酸化が−32%となっていました。

それでも対策の方向には一致があります。運動量が1段階上がるごとに体重が0.32kg少なかったこと。80件・5,581人のメタ分析で運動が骨密度にプラスの効果を示したこと。16週間のRCTでアンドロイド脂肪が139g減り、骨塩量が1.13g増えたこと。結論が割れていても、やるべきことは揃っています。

そして、加速が起きるのは最終月経の約2年前から約1.5年後までの、およそ3.5年間でした。日本人女性の平均閉経年齢は50.5歳です。この数年をどう過ごすかで、その後の10年、20年の体は変わります。年齢を重ねることは、失うことではありません。何が起きているかを数字で知り、手を当てられます。

日吉に通うのが難しい方には、オンラインもあります。横浜のオンラインパーソナルトレーニング・オンライン食事指導(CLEAN.Online)では、ご自宅から画面越しにフォームを確認しながら進められます。体調の波がある時期こそ、移動の負担がないことが続けやすさにつながります。

- CLEAN.

出典

Greendale GA ほか, JCI Insight, 2019/Greendale GA, Han W, Finkelstein JS, Burnett-Bowie SA, Huang M, Martin D, Karlamangla AS, The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, 2021/Sternfeld B ほか, American Journal of Epidemiology, 2004/Karppinen JE ほか, The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, 2023/Pontzer H ほか, Science, 2021/Lovejoy JC, Champagne CM, de Jonge L, Xie H, Smith SR, International Journal of Obesity, 2008/Greendale GA ほか, Journal of Bone and Mineral Research, 2012(SWAN Fact Sheet: Bone Health over the Menopause Transition 経由)/Mohebbi R, Shojaa M, Kohl M, von Stengel S ほか, Osteoporosis International, 2023/Nunes PRP, Castro-e-Souza P ほか, Journal of Sport and Health Science, 2024/Coll-Risco I, Acosta-Manzano P, Borges-Cosic M, Camiletti-Moiron D, Aranda P, Soriano-Maldonado A, Aparicio VA, Journal of Clinical Medicine, 2019/Isenmann E ほか, BMC Women's Health, 2023/Kongnyuy EJ, Norman RJ, Flight IHK, Rees MC, Cochrane Database of Systematic Reviews, 2000/Avis NE, Crawford SL, Greendale G ほか, JAMA Internal Medicine, 2015/Baker FC, Lampio L, Saaresranta T, Polo-Kantola P, Sleep Medicine Clinics, 2018/厚生労働省「更年期症状・障害に関する意識調査」基本集計結果, 2022/女性の健康推進室 ヘルスケアラボ(厚生労働省研究班監修)

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