生理前に2〜3kg増えるのか。月経周期と体重・食欲・トレーニングを数字で

「生理前になると絶対に食べすぎるんです」

日吉の体験トレーニングで、実際にうかがった言葉です。続けて「しかも体重が2kgくらい増えるんです」とおっしゃる方も多くいます。ご自身を責めるような言い方をされることが、とても多い。けれどこれは意思の強さの話ではなく、ホルモンと測定誤差と食欲調節の話です。どこまでが生理学で説明でき、どこからが説明できないのか。それを分けて知るだけで、月に一度落ち込む理由がひとつ減ります。

この記事では、月経周期と体重・食欲・トレーニングについて、実際に確認できた研究だけを引用して整理します。この分野は研究が割れている領域が多く、よく語られている数字の多くには裏づけがありません。断定できないところは断定しません。なお、痛みや出血量、無月経といった症状は、記事ではなく医療機関の領域です。

体重は、月経周期でどれくらい動くのか

結論から書きます。「生理前に2〜3kg増える」という数字を裏づける研究は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。

Watson と Robinson が British Journal of Nutrition に1965年に発表した調査は、18〜20歳の女性28名・計48周期分の体重を追跡したものです。体重の変動係数の平均は0.65%でした。体重55kgの方なら、およそ0.36kgです。最大のずれは正で1.77kg、負で1.32kgですが、これは極値です。体重が最も高くなったのも、月経前ではなく月経の前半でした。

新しい研究も同じ方向です。Thompson らが European Journal of Applied Physiology に2021年に発表した研究(計52名)では、体重そのものに有意な変化は認められませんでした。Stein-Brüggemann らが German Journal of Exercise and Sport Research に2025年に発表した研究(17名)でも、月経期・卵胞期・排卵期・黄体期中期の4時点で変動係数は0.8〜2.7%にとどまっています(p > 0.05)。

では「むくんでいる感じ」は気のせいか。そうではありません。White らが Obstetrics and Gynecology International に2011年に発表した研究は、女性62名・765周期分の日誌を1年間集めたものです。自覚的なむくみ感は月経1日目に最も高く、卵胞期中期に最も低いという結果でした(月経前後と周期中間の差は p < 0.001)。ただしエストラジオール・プロゲステロンの値との関連は見られませんでした(p > 0.05)。感覚は実在しますが、それを「ホルモンが何kg分の水を溜めている」と説明できる段階に研究は来ていません。ここは、断定しないほうが誠実な領域です。

食欲は、本当に増えるのか

ここには、はっきりしたメタ解析があります。Tucker らが Nutrition Reviews に2025年に発表した系統的レビューとメタ解析は、15のデータセット・女性330名(平均26±4歳、BMI 22.4±2.3)をまとめたものです。黄体期のエネルギー摂取量は卵胞期より有意に多く(標準化平均差 SMD = 0.69、P = .039)、差は1日あたりおよそ168kcalでした。

この168kcalは、覚えておく価値があると思います。おにぎり1個ぶんくらいです。黄体期に食欲が増すのは実際に起きていることですが、「箍が外れる」ほどの大きさではありません。そしてこれはあなただけの反応ではなく、平均として観察される現象です。

安静時代謝率は上がるのか

ここは正直に書きます。研究が割れています。Benton、Hutchins、Dawes が PLOS ONE に2020年に発表したメタ解析(26研究・女性318名)では、全体としては黄体期に安静時代謝率が高いという小さな有意差が出ました(効果量 0.33、95%信頼区間 0.17〜0.49、p < 0.001)。ところが2000年以降の研究だけに絞ると、有意ではなくなります(効果量 0.23、95%信頼区間 −0.00〜0.47、p = 0.055)。測定機器や算出方法が研究ごとに違うため、著者らは差を「1日何kcal」という形で示せなかったとしています。「代謝が上がるから食べても大丈夫」も「増えた分はそのまま脂肪になる」も、今のデータからは言えません。

PMS・PMDDは、どれくらいの人に起きているのか

数字の前に定義の話です。2周期分の症状を前向きに記録して診断したものと、あとから思い出して答えたアンケートとでは、出てくる数字がまったく違います。Reilly らが Journal of Affective Disorders に2024年に発表したメタ解析(44研究・計50,659名)では、月経前不快気分障害(PMDD)の有病率は確定診断で3.2%(95%信頼区間 1.7〜5.9%)、暫定診断では7.7%(5.3〜11.0%)でした。一般住民を確定診断で見ると1.6%(1.0〜2.5%)まで下がります。

より広い概念であるPMS(月経前症候群)については、Liu らが Human Reproduction に2024年に発表した世界疾病負荷研究(GBD 2019)の解析で、有病者数が1990年の6億5,250万人から2019年の9億5,600万人へ46.5%増加した一方、年齢調整後の有病率は30年間ほぼ横ばいだと報告されています。日本では、厚生労働省研究班監修の「ヘルスケアラボ」に軽度の月経痛は月経のある女性の7割にみられるという記載があり、日本産婦人科医会の解説では月経困難症は生殖年齢女性の25%以上、25歳未満では40%以上に認められるとされています。珍しいことではない、という前提から始めてよいと思います。

周期に合わせて筋トレの負荷を変えるべきか

「卵胞期に高重量、黄体期は軽めに」という周期化の考え方が広まっています。ここも正直に書きます。それを支持する十分な根拠は、現時点ではありません。

McNulty らが Sports Medicine に2020年に発表した系統的レビューとメタ解析(78研究・1,193名)では、早期卵胞期と他の時期を比べた運動パフォーマンスの効果量は−0.06(95%信用区間 −0.16〜0.04)で、著者らはこれを「些細な(trivial)低下」と呼んでいます。エビデンスの質はGRADE評価で「低」が42%でした。Colenso-Semple らが Frontiers in Sports and Active Living に2023年に発表したアンブレラレビューは、「早期卵胞期は負荷を下げるべき」と提言したレビューについて異質性が I² > 80% と極端に高く根拠が不十分だと指摘し、短期的なホルモン変動が筋力や筋肥大の適応に影響すると結論づけるのは時期尚早であるとしています。多くの研究で周期の時期判定そのものが不正確だった点も、問題に挙げられています。

月経困難症・過多月経と、鉄

見落とされやすいわりに、影響の大きい話です。Bruinvels らが PLOS ONE に2016年に発表した調査では、運動習慣のある女性1,862名のうち、オンライン回答者の54.1%、マラソンランナーの35.5%が過多月経の基準を満たしていました。一方で医療機関に相談していたのは全体の22.3%にとどまります。

Pasricha らが The Journal of Nutrition に2014年に発表したメタ解析(生殖年齢の女性・22試験・911名)では、鉄の補給により体重あたりの最大酸素摂取量が2.35 mL/kg/分改善し(95%信頼区間 0.82〜3.88、P = 0.003)、最大下運動時の心拍数が4.05拍/分低下しました(95%信頼区間 −7.25〜−0.85、P = 0.01)。同じ運動が楽になる方向に動きます。ただし鉄は過剰でも問題になるため、自己判断での開始はおすすめしません。出血量が多い、疲れやすい、階段で息が上がる。そうした自覚があるなら、まず採血のできる医療機関です。

減量を頑張りすぎたときに起きること(REDs)

この記事でいちばんお伝えしたい話題です。Mountjoy らが British Journal of Sports Medicine に2023年に発表した国際オリンピック委員会(IOC)の合意声明は、スポーツにおける相対的エネルギー不足(REDs)を、問題となるレベルの利用可能エネルギー不足にさらされることで生じる、生理的・心理的機能の障害と定義しています。影響を受ける領域として、エネルギー代謝、生殖機能、筋骨格の健康、免疫、心血管系・血液系が挙がります。歴史的に参照されてきた閾値は除脂肪量1kgあたり30kcal/日以下ですが、声明はこれを一律に当てはめるべきではないと注意を促しています。

日本スポーツ振興センターの資料では、女性アスリートの三主徴として利用可能エネルギー不足・視床下部性無月経・骨粗鬆症が挙げられています。能瀬さやか医師が2020年に内閣府の重点方針専門調査会(第23回)で示した資料には、国立スポーツ科学センターの調査でアスリート300名中117名(39.0%)に視床下部性無月経が認められたこと、日本人アスリート390名の調査で疲労骨折のリスクが無月経で12.9倍、低骨量で4.5倍と報告されていることが記載されています(比較対象の詳細は、今回参照した資料からは確認できませんでした)。

これは競技者だけの話ではありません。食事量を減らしながら運動量を増やす組み合わせは、誰でも作れてしまいます。月経が止まった、周期が極端に乱れた。それは「順調に減量できている」サインではなく、確認が必要なサインです。まず婦人科です。

参考:日吉のCLEAN.の場合

CLEAN.は、日吉駅 西口から徒歩3分の女性専用・完全個室のパーソナルジムです(男性は法人契約と、既存会員様からのご紹介のみ)。完全個室にしているのは、体調や月経周期の話を人の目を気にせずできるようにするためでもあります。ウェア・シューズ・タオル・水はすべて無料でお貸ししているので、手ぶらで通えます。荷物を増やしたくない日には、これはそれなりに効く条件です。

月額プランには、毎日のLINE食事指導と10日ごとのフィードバックが含まれます。10日単位で振り返るのは、短い期間の体重の上下から読み取れる情報が限られているからです。変動係数がおよそ0.65%という報告がある以上、1日ごとの増減に意味を持たせようとすると判断を誤りやすくなります。日々のLINEでは食事の中身を、10日ごとのフィードバックでは流れを見ます。

トレーニングの負荷は、カレンダーではなくその日の状態から決めています。研究が示すのは、周期に合わせて負荷を決める一般的なルールは作れないということでした。ですので「今日は生理前だから軽くしましょう」と決め打ちはしません。つらい日はつらいとおっしゃっていただければ、内容を変えます。理由の説明は不要です。

痛みや出血量、無月経といったご相談は、医療機関の領域です。CLEAN.では歯科医師・理学療法士・鍼灸師とつながりがあり必要に応じてご紹介していますが、体調や痛みに関わることはまず受診をお願いしています。料金は月4回コース42,000円(税込46,200円)、月8回コース72,000円(税込79,200円)、24回分の回数券は211,200円(税込232,320円・有効期限180日/LINEの食事指導は含まれません)、入会金30,000円(税込33,000円)で、これ以外の追加料金はありません。通い方の選び方は3つのプランの違いと料金・プランのページにまとめています。

まとめ

体重について。Watson と Robinson(1965年・28名)では変動係数の平均は0.65%、Thompson ら(2021年・52名)では体重に有意な変化はなく、Stein-Brüggemann ら(2025年・17名)でも0.8〜2.7%でした。「生理前に2〜3kg増える」という大きさを裏づける研究は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。むくみの自覚は実在しますが、White ら(2011年・62名/765周期)ではそのピークは月経1日目で、ホルモン値との関連も認められていません。

食欲について。Tucker ら(2025年・330名)では黄体期のエネルギー摂取量は卵胞期より有意に多く(SMD = 0.69、P = .039)、差は1日あたり約168kcalでした。安静時代謝率は、Benton ら(2020年・318名)で全体では黄体期に高い結果(効果量0.33、p < 0.001)でしたが、2000年以降の研究に絞ると有意差は消えます(p = 0.055)。

トレーニングについて。McNulty ら(2020年・78研究/1,193名)では早期卵胞期の効果量は−0.06と些細で、エビデンスの質は「低」が42%でした。Colenso-Semple ら(2023年)も、周期に合わせた周期化を結論づけるのは時期尚早だとしています。カレンダーではなく、その日の体調で決めてください。

最後に、無視してはいけない数字が2つあります。Bruinvels ら(2016年)では運動する女性の35.5〜54.1%が過多月経の基準を満たしながら、医療機関に相談していたのは22.3%でした。もうひとつは、アスリート300名中39.0%に視床下部性無月経という日本の調査です。減量を頑張ること自体は悪くありませんが、月経が止まったときは、そこで一度止まってください。

日吉に通うのが難しい方には、横浜のオンラインパーソナルトレーニング・オンライン食事指導(CLEAN.Online)もご用意しています。画面越しでも、10日ごとに流れを見るという進め方は変わりません。

- CLEAN.

出典

Watson PE, Robinson MF, British Journal of Nutrition, 1965/White CP, Hitchcock CL, Vigna YM, Prior JC, Obstetrics and Gynecology International, 2011/Thompson B ほか, European Journal of Applied Physiology, 2021/Stein-Brüggemann ほか, German Journal of Exercise and Sport Research, 2025/Tucker ほか, Nutrition Reviews, 2025/Benton MJ, Hutchins AM, Dawes JJ, PLOS ONE, 2020/Reilly TJ ほか, Journal of Affective Disorders, 2024/Liu X, Li R, Wang S, Zhang J, Human Reproduction, 2024/McNulty KL ほか, Sports Medicine, 2020/Colenso-Semple LM, D'Souza AC, Elliott-Sale KJ, Phillips SM, Frontiers in Sports and Active Living, 2023/Bruinvels G ほか, PLOS ONE, 2016/Pasricha SR ほか, The Journal of Nutrition, 2014/Mountjoy M ほか, British Journal of Sports Medicine, 2023/日本産婦人科医会「月経困難症」/厚生労働省研究班監修 女性の健康推進室ヘルスケアラボ「月経困難症」/日本スポーツ振興センター Female Sport ナビ「スポーツにおける相対的エネルギー不足(REDs)と女性アスリートの三主徴(Triad)」/能瀬さやか, 内閣府 男女共同参画会議 重点方針専門調査会(第23回)資料2, 2020

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