体験トレーニングにお越しになる方から、「反り腰なんです」「反り腰だから腰が痛いんだと思います」という相談をよく受けます。整体や美容院で「反り腰ですね」と言われて、気になり始めたという方も多いです。
この記事では、反り腰とは何か、本当に腰痛の原因なのか、何をすればいいのかを、研究と日本整形外科学会の資料をもとに整理します。はっきりしていることと、まだはっきりしていないことは分けて書きます。
先に結論です
- 反り腰は病名ではありません。腰の反り(腰椎の前弯)が大きい、または骨盤が前に傾いている(骨盤の前傾)姿勢を指す、ふだんの言葉です。
- 痛みのない健康な人でも、骨盤が前に傾いているのは普通です。健康な120人を調べた研究では、男性の85%、女性の75%に骨盤の前傾がありました。
- 「反りが大きいほど腰痛になりやすい」という関係は、研究でははっきりしません。13件の研究をまとめた解析では、腰痛のある人のほうが、むしろ反りが小さい傾向がありました。
- 「お腹とお尻が弱く、腿の前と腰が硬いから反る」という説明(下位交差症候群)は、600人を調べた研究で支持されませんでした。
- 腰痛に対して根拠がそろっているのは、姿勢を正すことより、運動を続けることと、できる範囲で普段どおり動くことです。
- 脚のしびれや力が入らない、尿漏れ、安静にしても痛みが軽くならない、発熱があるときは、運動より先に整形外科を受診してください。
以下、それぞれの根拠を順番に書きます。
反り腰とは、腰の反りが大きく見える姿勢のことです
背骨は横から見ると、まっすぐではなくS字に曲がっています。腰の部分(腰椎)は、お腹側に向かってゆるやかに反っているのが本来の形で、これを腰椎の前弯といいます。反り腰は、この反りが大きく見える状態です。
腰の反りは、骨盤の傾きと連動します。骨盤が前に傾く(骨盤の前傾)と、お腹が前に出て、お尻が後ろに突き出たように見えます。
ただし、「何度以上なら反り腰」という決まった基準はありません。反り腰は医学的な診断名ではなく、見た目を表す言葉です。腰の反りそのものは、誰にでもある、体に必要なカーブです。
「正常な反り」の幅は、人によってかなり違います
痛みのない人を調べると、反りの大きさにはかなりの個人差があります。
- 症状のない300人を、立った姿勢でレントゲン撮影した研究(2005年、Journal of Bone and Joint Surgery)では、腰の反りの角度は平均60°±10°、骨盤の傾きは平均13°±6°でした。
- 理学療法の測り方をまとめた2021年のレビュー(International Journal of Sports Physical Therapy)によると、症状のない大人のレントゲンでの骨盤の傾きは、−4.5°から27°まで幅がありました。
- 健康な120人(男性65人・女性55人)の骨盤の傾きを測った研究(2011年、Manual Therapy)では、男性の85%、女性の75%が骨盤の前傾でした。まっすぐ(中間)だったのは男性9%、女性18%、後ろに傾いていたのは男性6%、女性7%です。
骨そのものの形も、人によって違います。30体の骨盤の骨を同じ向きに固定して、腰骨の前と後ろの出っぱりを結ぶ角度を測った研究(2008年、Journal of Manual and Manipulative Therapy)では、角度は0°から23°までばらつきました。体の表面から出っぱりを触って「骨盤が前に傾いている」と判断しても、骨の形を見ている可能性がある、ということです。
120本以上の論文をまとめた2014年のレビュー(The Spine Journal)でも、腰の反りは年齢、性別、BMI、人種、スポーツの種類によって変わるため、全員に同じ正常値を決めるのは難しいとされています。さらに、最適な反りの範囲は分かっていないと書かれています。
「女性は反り腰になりやすい」とよく言われます。大学生を測った研究(2007年、Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy)では、骨盤の前傾は女性のほうが平均で3〜4°ほど大きめでした。一方で、上の120人の研究では、前傾だった人の割合は男性のほうが多くなっています。性別による違いはあっても、「女性だから反り腰」と言えるほどの差ではありません。
反り腰と腰痛の関係は、はっきりしていません
「反り腰だから腰が痛い」と考える方は多いですが、研究の結果はそうなっていません。
腰痛のある人は、むしろ反りが小さい傾向でした。腰痛のある人796人と健康な人927人を比べた13件の研究をまとめたメタ解析(2017年、The Spine Journal)では、腰痛のある人のほうが腰の反りの角度が小さい傾向がありました。年齢をそろえた6件の研究でも同じ結果で、椎間板ヘルニアや椎間板の変性による腰痛では、反りが小さいこととの関係がより強く出ていました。ただし、痛みがあって反りが小さくなったのか、その逆なのかは、この種の研究では分かりません。
反りの大きさに、差がなかったというまとめもあります。腰痛のある人とない人の、腰と骨盤の姿勢や動きを比べた43件の研究をまとめたメタ解析(2014年、BMC Musculoskeletal Disorders)では、腰の反りの大きさには差がありませんでした(8件)。差があったのは、腰の動く範囲が小さいことと、動きがゆっくりなことでした。
筋肉の持久力や筋力のほうが関係していました。腰痛のある男女各150人と、ない男女各150人、あわせて600人で17の項目を測った研究(2002年、Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy)では、腰の反りの大きさと骨盤の傾きは、腰痛と関係がありませんでした。関係がいちばん強かったのは背中の筋肉の持久力で、腹筋や股関節まわりの筋力も腰痛と関係していました。
同じ方向の結果は、将来の腰痛を追いかけた研究にもあります。12件・5,459人の追跡研究をまとめた系統的レビュー(2017年、BMC Musculoskeletal Disorders)では、反りが小さいことが、その後の腰痛と関係していました。
反りが大きいことと関係がありそうなものもあります。上の2014年のレビューでは、反りが大きいことは腰椎分離症・分離すべり症と関係していました。反りと腰痛の関係そのものについては、結論が出ていないとしています。
反りが大きいことが、腰痛とまったく関係ないとまでは言い切れません。ただ、「反り腰だから腰痛になる」と単純に言える根拠はない、というのが今の研究から言えることです。
「下位交差症候群」は、研究では支持されていません
反り腰の説明でよく出てくるのが下位交差症候群という考え方です。お腹とお尻の筋肉が弱く、腿の前(股関節を曲げる筋肉)と腰の筋肉が硬いため、骨盤が前に傾いて反り腰になり、腰痛につながる、という説明です。分かりやすいので、ジムや整体でよく使われます。
この考え方を、そのまま確かめた研究があります(2006年、Journal of Back and Musculoskeletal Rehabilitation)。20〜65歳の600人を、腰痛のある男女・ない男女の4グループに分け、腰の反り、腹筋とお尻の筋力、腿の前・腰・裏ももの柔軟性を測りました。
- どの筋肉が弱いか・硬いかのパターンで分けても、腰の反りの大きさに差はありませんでした。
- 腰痛があるかどうかでも、腰の反りに差はありませんでした。
- 一方で、腹筋とお尻の筋力、股関節を曲げる筋肉と裏ももの柔軟性は、腰痛のある人とない人で差がありました。
著者たちは、筋肉の弱さや硬さが腰痛に関わっている可能性はあるものの、それは腰の反りを変えることを通してではないだろうとまとめています。お腹やお尻を鍛える意味はあります。でもそれは「反りを直すため」ではなく、「体を支える力をつけるため」と考えるほうが、研究と噛み合っています。
この構図は猫背とよく似ています。姿勢の形と痛みが単純に結びつかないことは、猫背は治るのか。姿勢と痛みの関係を研究で確かめるでも書きました。姿勢は、その人の体の運命を決めるものではありません。
腰痛に効くと分かっているのは、運動と「動き続けること」です
では、腰痛に対して何が勧められているのか。
日本整形外科学会と日本腰痛学会が監修した腰痛診療ガイドライン2019では、慢性腰痛に対して運動療法は有用として、強く推奨されています(推奨度1、エビデンスの強さB)。一方で、急性腰痛・亜急性腰痛に対しては、根拠がはっきりしないとして推奨はついていません。
慢性腰痛の運動療法については、249件の試験をまとめた大きなレビューがあります(2021年、Cochrane Database of Systematic Reviews)。参加者の平均年齢は43.7歳、平均59%が女性です。何もしない場合や通常の治療と比べて、運動をした人は、0〜100点で表した痛みが平均15.2点軽くなっていました(確実性は中程度)。日常生活の動きやすさの改善は小さめでした。報告された副作用の多くは、筋肉痛などの軽いものです。このレビューは反りを直す運動に絞ったものではなく、さまざまな運動をまとめたものです。
急な腰痛では、寝て安静にするより、できる範囲で動くほうがよいことが分かっています。10件の試験をまとめた2010年のレビュー(Cochrane Database of Systematic Reviews)では、急性腰痛の人に「普段どおり動くように」と助言したほうが、「ベッドで安静に」と助言するより、痛みと動きやすさが少しよくなっていました。脚に痛みが広がる坐骨神経痛では、どちらでもほとんど差がありませんでした。
運動の選び方と、ストレッチやマッサージとの使い分けは、肩こり・腰痛のケア。ストレッチとマッサージと運動の使い分けにまとめています。
実際にやること:鍛える、伸ばす、姿勢を変え続ける
ここまでをふまえて、反り腰が気になる方、腰に不安がある方にお伝えしていることです。反りの角度を変えることより、痛みなく動ける体をつくることを目的にしています。
- お尻を鍛える:ヒップリフトやスクワットなど。600人の研究で、お尻の筋力は腰痛のある人とない人で差がありました。お尻を鍛えることのほかの利点はお尻を鍛えるメリットで書いています。
- お腹と背中を鍛える:プランクのように体幹を支える運動と、背中の筋肉を使う運動。2002年の研究では、背中の筋肉の持久力が、腰痛といちばん強く関係していました。
- 股関節の前側を伸ばす:座りっぱなしが長い方は、股関節を伸ばす動きが少なくなりがちです。ストレッチで反りが直るという根拠は弱いですが、動ける範囲を保つ意味はあります。
- 同じ姿勢を続けない:「正しい姿勢」を一つ決めて固めるより、ときどき立つ、座り方を変える、歩くなど、姿勢を変え続けるほうが現実的です。腰痛のある人は腰の動く範囲が小さく、動きもゆっくりだった、という研究もあります。
どれも、反り腰かどうかに関係なく、腰痛の予防として意味のある運動です。日本整形外科学会も、腰痛の予防として、日常の姿勢に気をつけることと、腰を支える力を高める運動や体操を続けることを勧めています。
こんなときは、運動より先に整形外科へ
腰痛の多くは、運動を続けながら様子を見てよいものです。ただし、日本整形外科学会は、次のような症状をともなう場合は、早めに整形外科を受診するよう呼びかけています。
- 安静にしていても痛みが軽くならない
- 痛みがしだいに悪化する
- 発熱している
- 脚がしびれる、脚に力が入らない
- 尿漏れがある
腰痛診療ガイドライン2019でも、腰痛の診察では、がん、感染、骨折、重い神経の症状をともなう背骨の病気といった、重要な病気を見分けることが必要だとされています。体を反らすと強く痛む場合や、痛みが長く続く場合も、自己判断で運動を続けず、一度診てもらってください。
参考:日吉のCLEAN.の場合
比較の材料になるよう、当ジムがどうしているかも書いておきます。
CLEAN.は、日吉駅 西口から徒歩3分、女性専用・完全個室のパーソナルジムです。行っているのは、ダンベルやマシンを使う筋トレと、毎日のLINEでの食事指導です。この記事で書いたとおり、反り腰の角度を直すことはお約束できませんし、目標にもしていません。私たちがお手伝いできるのは、お尻、お腹、背中の筋力をつけて、動きやすい体をつくることです。
体験トレーニングでは、最初に姿勢と動きを確認し、目的をうかがいます。腰痛で治療中の方や、上のような症状がある方は、主治医の判断を優先してください。
まとめ
反り腰は病名ではなく、腰の反りが大きく見える、骨盤が前に傾いて見える姿勢を指す言葉です。痛みのない人でも反りの大きさには大きな個人差があり、骨盤が前に傾いているのはむしろ普通です。
反りが大きいことと腰痛の関係は、研究でははっきりしていません。腰痛のある人はむしろ反りが小さい傾向があるというメタ解析もあり、「お腹とお尻が弱いから反って痛む」という下位交差症候群の説明も、600人の研究では支持されませんでした。
腰痛に対して根拠がそろっているのは、運動を続けることと、できる範囲で普段どおり動くことです。反りの角度を気にしすぎず、お尻・お腹・背中を鍛えて、姿勢を変え続ける。気になる症状があれば、先に整形外科へ。これが、研究から言える反り腰との付き合い方です。
- CLEAN.
参考文献
Vialle R ほか, Journal of Bone and Joint Surgery (American Volume), 2005/Suits WH, International Journal of Sports Physical Therapy, 2021/Herrington L, Manual Therapy, 2011/Preece SJ ほか, Journal of Manual and Manipulative Therapy, 2008/Been E, Kalichman L, The Spine Journal, 2014/Nguyen AD, Shultz SJ, Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy, 2007/Chun SW, Lim CY, Kim K, Hwang J, Chung SG, The Spine Journal, 2017/Laird RA ほか, BMC Musculoskeletal Disorders, 2014/Nourbakhsh MR, Arab AM, Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy, 2002/Nourbakhsh MR, Arab AM, Salavati M, Journal of Back and Musculoskeletal Rehabilitation, 2006/Sadler SG ほか, BMC Musculoskeletal Disorders, 2017/Hayden JA ほか, Cochrane Database of Systematic Reviews, 2021/Dahm KT ほか, Cochrane Database of Systematic Reviews, 2010/日本整形外科学会・日本腰痛学会 監修「腰痛診療ガイドライン2019」/日本整形外科学会「症状・病気をしらべる:腰痛」
反り腰が気になる方、腰に不安がある方は、今の体の状態で取り組み方が変わります。まずは体験トレーニング(約50分)で、一緒に確認しましょう。→ 体験トレーニングの流れを見る
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よくある質問
反り腰は治したほうがいいですか?
痛みがなく、生活に困っていなければ、急いで治す必要はないと考えています。健康な120人を調べた研究では、男性の85%、女性の75%に骨盤の前傾がありました。見た目が気になる場合や腰痛がある場合も、反りの角度そのものより、体を支える筋力と動きやすさを高めることを優先します。
反り腰だと腰痛になりやすいですか?
研究では、はっきりした関係は見つかっていません。13件の研究をまとめた解析では、腰痛のある人のほうが、むしろ腰の反りが小さい傾向がありました。600人を調べた研究でも、反りの大きさや骨盤の傾きと腰痛との関係は見られませんでした。
反り腰で腰が痛いとき、どんな運動がいいですか?
腰痛診療ガイドライン2019では、慢性腰痛に対して運動療法が強く推奨されています。反りを直すことにこだわらず、お尻・お腹・背中の筋トレと、股関節まわりのストレッチを続けるのが現実的です。脚のしびれや力が入らない、尿漏れ、発熱などがある場合は、先に整形外科を受診してください。
この記事は、日吉駅西口から徒歩3分・女性専用の日吉のパーソナルジム CLEAN. が書いています。