ダイエットの相談をしていると、「寝不足だと太るって本当ですか」と聞かれることがあります。食事も運動も頑張っているのに、睡眠だけは後回しになっている方は少なくありません。
この記事では、睡眠不足と食欲・体重の関係を、研究の数字で整理します。先にお伝えしておくと、「寝不足だと太る」は、半分は実験で確かめられていて、半分はまだ分かっていません。分かっていることと分かっていないことを、分けて書きます。
先に結論です
- 寝不足の日は、食べる量が増えます。睡眠を短くした実験をまとめた解析では、1日あたり約385kcal多く食べていました。一方で、消費エネルギーはほとんど増えていません。
- 減量中の寝不足は、落ちるものの中身を悪くします。同じカロリー制限をしても、睡眠が短いと脂肪の減りが少なく、筋肉などの除脂肪量が多く減りました。
- 睡眠を増やすと、食べる量が自然に減ったという試験もあります。ふだん6.5時間未満の人が睡眠を約1.2時間増やすと、1日の摂取量が対照グループより約270kcal少なくなりました。
- 時間の目安は、成人で6時間以上(厚生労働省)です。ただし「寝不足を続けると何kg太る」と言えるほどの長期の試験は、まだありません。
以下、それぞれの根拠を順番に書きます。
寝不足の日は、1日あたり約385kcal多く食べています
まず、いちばん数字がはっきりしている話からです。睡眠時間を短くした実験を集めて統合したメタ解析(2017年、英キングス・カレッジ・ロンドン)があります。数字を統合できたのは11件・172人の研究で、睡眠を短くした条件(1晩あたりおよそ3.5〜5.5時間)と、ふつうに眠った条件を比べています。
- 摂取エネルギー:寝不足の条件で 1日あたり+385kcal
- 消費エネルギー(1日の総消費量・安静時の代謝):有意な変化なし
- 食事の中身:脂質が増え、たんぱく質が減った。炭水化物は変わらなかった
大事なのは、起きている時間が長くなっても、消費エネルギーはほとんど増えていないことです。食べる量だけが増えるので、差し引きで余りが出ます。たんぱく質が減って脂質が増えるという中身の変化も、ダイエット中にはうれしくない方向です。
ただし、この解析に入った研究の多くは、1日〜2週間の短いもので、実験室の中で行われています。研究チーム自身も、この食べ過ぎが長く続けば体重増加に「つながる可能性がある」という書き方にとどめています。
なぜ食べたくなるのか。食欲にかかわるホルモンが動きます
寝不足で食欲が増える理由として、よく挙げられるのが、食欲にかかわる2つのホルモンです。
- レプチン:脂肪細胞から出て、「もう足りている」と脳に伝えるホルモン
- グレリン:主に胃から出て、空腹感を高めるホルモン
米シカゴ大学の実験(2004年)では、健康な20代前半の男性12人が、ベッドにいる時間を4時間にした2晩と、10時間にした2晩を比べました。実際に眠れた時間は、約3時間53分と約9時間8分です。4時間の条件では、次のように変わっていました。
- レプチン(満腹のホルモン):−18%
- グレリン(空腹のホルモン):+28%
- 空腹感:+24%、食欲:+23%
- カロリーが高く炭水化物の多い食べ物への食欲:+33〜45%
甘いもの、しょっぱいスナック、パンや麺のようなでんぷん質の食べ物が欲しくなる、という変化です。寝不足の日にコンビニで菓子パンに手が伸びるのは、こうした体の反応とも重なります。
ただし、対象は若い男性12人で、寝不足は2晩だけです。女性で同じ大きさの変化が起きるかは、この研究からは分かりません。また、ホルモンだけで食欲の増え方をすべて説明できるわけでもありません。起きている時間が長ければ、食べる機会そのものが増えます。
5日間の寝不足で、体重が1kg近く増えました
次は、食べる量だけでなく、体重まで測った実験です。米コロラド大学の研究(2013年)では、若くやせ型の健康な成人16人が、約2週間、病院の睡眠研究施設に泊まり込みました。食事を多めに出し、間食も自由に取れる状態で、5時間しか眠れない5日間と、9時間眠れる5日間を比べています。
- 消費エネルギー:5時間睡眠のほうが 5%多い
- 摂取エネルギー:5時間睡眠のほうが 6%多い
- 体重:5時間睡眠の5日間で 2ポンド(約0.9kg)近く増加
起きている時間が長いぶん、消費エネルギーは少し増えました。しかし、それ以上に食べていたので、体重は増えています。食べ方にも特徴がありました。寝不足のときは朝食が少なくなり、夕食後の間食のカロリーが、朝・昼・夕どの1食よりも多くなっていたのです。
夜になると「なんとなく何か食べたい」が強くなるのは、意志の弱さだけの問題ではありません。夜の食欲と脳の関係は、夜中に食べたくなる理由(脳のしくみ)でもくわしく書いています。
この研究には、女性についての結果もあります。十分に眠れる条件では、女性は食べ物を自由に取れる状態でも体重を維持していました。一方、5時間睡眠では、男女とも体重が増えています。
減量中の寝不足は、落ちるものの中身を変えます
ダイエット中の方にいちばん知っておいてほしいのが、この研究です。
米シカゴ大学の試験(2010年)では、過体重の成人10人(平均41歳、BMI平均27.4)が、同じカロリー制限の食事を14日間ずつ、2つの条件で行いました。ベッドにいる時間を8.5時間にした条件と、5.5時間にした条件です。実際に眠れた時間は、約7時間25分と約5時間14分でした。
- 体重の減少:8.5時間 2.9kg、5.5時間 3.0kg(差なし)
- 脂肪の減少:8.5時間 1.4kg、5.5時間 0.6kg
- 除脂肪量(筋肉など脂肪以外)の減少:8.5時間 1.5kg、5.5時間 2.4kg
体重計の数字は、ほぼ同じだけ減っています。でも中身はまったく違います。しっかり眠った条件では減った体重の56%が脂肪だったのに対し、寝不足の条件では25%しか脂肪ではありませんでした。論文では、寝不足によって脂肪として減った割合が55%少なくなり、除脂肪量の減少が60%増えたとまとめています。
寝不足の条件では、空腹感が強く、空腹のホルモンのグレリンも高くなっていました。安静時の代謝も、体格などを調整したうえで1日あたり約147kcal低く出ています。
つまり、同じように食事を頑張っても、寝不足だと「筋肉を削って脂肪を残す」減り方に近づくということです。体重は落ちているのに見た目が変わらない、リバウンドしやすい、という状態につながりやすい減り方です。体脂肪がどう減っていくかの仕組みは体脂肪が減るメカニズムに、体重が止まったときの考え方は体重が減らなくなる理由(停滞期)にまとめています。
ただし、この研究も10人(うち女性3人)・2週間ずつという、小さく短い試験です。著者自身も、期間の短さと人数の少なさを限界として挙げています。
この試験の中身(筋肉と脂肪の減り方の違い)は、睡眠不足だと痩せないのか。落ちる「中身」が変わるという話で詳しく書いています。
睡眠を増やしたら、食べる量が自然に減りました
ここまでは「睡眠を削るとどうなるか」の研究でした。逆に、寝不足の人が睡眠を増やすとどうなるかを、ふだんの生活の中で調べた試験があります(2022年、米シカゴ大学)。
対象は、BMIが25〜29.9の過体重で、ふだんの睡眠が1晩6.5時間未満の21〜40歳の成人80人(平均29.8歳、約半数が女性)です。2週間ふだんどおりに過ごしたあと、半分の人だけが、ベッドにいる時間を8.5時間に近づけるための個別の睡眠指導を受けました。食事や運動の指示は一切していません。
- 睡眠時間:指導を受けたグループで、対照グループと比べて1晩あたり 約1.2時間増加
- 摂取エネルギー:指導グループ −155kcal/日、対照グループ +115kcal/日。差は約270kcal/日
- 体重(2週間):指導グループ −0.48kg、対照グループ +0.39kg。差は0.87kg
食事の指導をしていないのに、睡眠を増やしただけで1日の摂取量が減っています。摂取量は、本人の食事記録ではなく、二重標識水法という、体内の水の入れ替わりから消費エネルギーを測る方法をもとに推定しています。自己申告の記録よりも、食べた量をごまかしにくい方法です。
限界もあります。期間は2週間だけで、睡眠を増やした習慣がどれだけ続くかは分かっていません。対照グループの摂取量と体重が増えたことが、差を大きく見せている面もあります。
何時間寝ればいいのか
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、次のように書かれています。
- 成人:6時間以上を目安に、必要な睡眠時間を確保する
- 適正な睡眠時間には個人差があり、おおよそ6〜8時間
- 7時間前後の睡眠の人が、生活習慣病やうつ病の発症、死亡のリスクがもっとも低いと報告されている。それより短くても長くても、リスクは上がる
- 高齢者:ベッドにいる時間(床上時間)が8時間以上にならないことを目安にする
上の研究と並べると、5時間台の睡眠は、どの研究でも「食べる量が増える」「脂肪が落ちにくい」側に入っています。まずは6時間を下回らないこと、できれば7時間前後を目指すのが、今の根拠に沿った目安です。長く寝れば寝るほどよい、というわけではありません。
ただ、日本ではこの「6時間」を下回っている人が少なくありません。2019年の国民健康・栄養調査では、1日の平均睡眠時間が6時間未満の人は、男性37.5%、女性40.6%でした。女性では、40〜50歳代で4割を超えています。仕事と家事、子育てや介護が重なりやすい年代です。
また、ガイドでは、時間だけでなく「睡眠休養感」、つまり朝起きたときに休めたと感じられるかどうかも、大切な指標としています。時間は足りているのに休まった感じがしない場合は、後で書くように、病気が隠れていることもあります。
まだ分かっていないこと
ここまで紹介した実験は、どれも数日〜2週間の短いものです。「寝不足を何か月も続けると、どれだけ太るか」を、睡眠時間を割り付けて確かめた試験はありません。長い期間の話は、観察研究に頼ることになります。
観察研究では、関連ははっきり出ています。成人約60万人を含む研究をまとめたメタ解析(2008年)では、睡眠が短い人に肥満が多い関連が一貫して見られ、オッズ比は1.55でした。睡眠が1時間長いごとに、BMIは約0.35低い関連もありました。日本でも、男性労働者約4万人を7年間追った研究で、睡眠が5時間未満の人は5時間以上の人に比べ、肥満になるリスクが1.13倍だったと、睡眠ガイド2023で紹介されています。
ただし、これらは「睡眠が短い人に肥満が多い」という関連で、睡眠が原因かどうかまでは分かりません。仕事が忙しい、ストレスが多い、夜遅くに食べる、といった別の要因が、睡眠と体重の両方に関わっている可能性があります。2008年の解析の著者自身も、因果関係を言うには限界があると書いています。
逆向きの関係もあります。肥満は、睡眠中に呼吸が止まる「閉塞性睡眠時無呼吸」の原因の一つとして知られていて、無呼吸は睡眠の質を下げます。どちらが先かは、人によって違います。
まとめると、「寝不足だと食べる量が増え、減量の中身が悪くなる」ところまでは、実験で確かめられています。「寝不足を続けると何kg太る」とは、まだ言えません。
今日からできること
睡眠ガイド2023に書かれている内容から、ダイエット中の方に関係が深いものを選びました。
- まず「6時間を切らない」を目標にする:いきなり8時間を目指すより、寝る時間を少しずつ早めるほうが続きます。
- 寝る直前に食べない:ガイドでも、就寝直前の夕食や夜食は、睡眠休養感を下げる要因として挙げられています。
- 寝酒をしない:過度の飲酒や、睡眠薬代わりの寝酒は、寝つきの悪さや夜中の目覚めにつながります。
- カフェインは夕方以降を控える:コーヒーなど覚醒作用のある嗜好品は、寝つきの悪さや夜中の目覚めの原因になります。
- 寝室にスマートフォンを持ち込まない。明かりやテレビをつけたまま寝るのも避けてください。
- 朝は光を浴び、日中に体を動かす:ただし、ガイドのこども向けの項目では、寝る前1時間以内の激しい運動はかえって睡眠の質を下げる可能性があるとされています。大人でも、仕事帰りに遅い時間のトレーニングをする方は、終わってから寝るまでの時間を意識してください。
それでも寝不足になる日はあります。その日に食欲が強いのは、ある程度は体の自然な反応です。我慢だけで乗り切ろうとするより、「今日は食べたくなる日」と分かったうえで工夫するほうがうまくいきます。たとえば、寝不足のときはたんぱく質が減って脂質が増えやすいので、食事でたんぱく質を先に確保する。夕食後の間食が増えやすいので、甘いものを家に置かない、といった方法です。血糖値と空腹感の関係はお腹がすく仕組みと血糖値の関係に、気分と食事の関係は食べるものと気分の関係に書いています。
こんなときは、医療機関に相談してください
- 大きないびきや、睡眠中に呼吸が止まっていることを指摘された
- 時間は眠っているはずなのに、日中の眠気が強い
- 生活習慣を見直しても、寝つけない・夜中に何度も目が覚める状態が続く
睡眠ガイド2023でも、睡眠休養感が低く日中の眠気が強い場合は睡眠時無呼吸の検査を、生活習慣を見直しても眠れない状態が改善しない場合は医師への相談を勧めています。睡眠の病気は、トレーニングや食事の工夫では代わりになりません。
参考:日吉のCLEAN.の場合
比較の材料になるよう、当ジムの考え方も書いておきます。
CLEAN.は、日吉駅 西口から徒歩3分、女性専用・完全個室のパーソナルジムです。行っているのは、ダンベルやマシンを使う筋トレと、毎日のLINEでの食事指導です。睡眠そのものを治療することはできません。
ただ、上の2010年の試験からは、減量中に筋肉などの除脂肪量を残せるかどうかに、筋トレや食事だけでなく睡眠も関わっていることが読み取れます。夜遅くの食欲がなかなか収まらないときは、食事の内容と一緒に、前の晩の睡眠時間も振り返ってみてください。
体験トレーニングは約50分・5,000円(税込5,500円)で、ご入会された場合は無料になります。ウェア・シューズ・タオル・水はすべてお貸しするので、手ぶらで来ていただけます。
まとめ
寝不足の日は、食べる量が増えます。睡眠を短くした実験をまとめると、1日あたり約385kcalでした。消費エネルギーはほとんど増えないので、余りが出ます。
減量中に寝不足が続くと、体重の減り方は同じでも、脂肪の減りが少なく、筋肉などの除脂肪量が多く減りました。反対に、睡眠を約1.2時間増やした試験では、食事の指導なしで摂取量が約270kcal少なくなっています。
目安は成人で6時間以上、できれば7時間前後です。「寝不足を続けると何kg太る」はまだ分かっていませんが、ダイエットの土台として、睡眠を後回しにしない価値は十分にあります。
- CLEAN.
出典
Al Khatib HK ほか, European Journal of Clinical Nutrition, 2017/Spiegel K ほか, Annals of Internal Medicine, 2004/Markwald RR ほか, Proceedings of the National Academy of Sciences of the USA, 2013/Nedeltcheva AV ほか, Annals of Internal Medicine, 2010/Tasali E ほか, JAMA Internal Medicine, 2022/Cappuccio FP ほか, Sleep, 2008/厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」/厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査」(健康日本21(第三次)推進専門委員会 資料より)
睡眠・食事・運動のどこから手をつけるかは、今の生活によって変わります。まずは体験トレーニング(約50分)で、一緒に確認しましょう。→ 体験トレーニングの流れを見る
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よくある質問
寝不足だと本当に太りますか?
寝不足の日は食べる量が増え(短い実験をまとめると1日あたり約385kcal)、消費エネルギーはほとんど増えないことが分かっています。5日間の寝不足で体重が1kg近く増えた実験もあります。ただし、寝不足を何か月も続けたときにどれだけ太るかを確かめた試験は、まだありません。
ダイエット中は何時間寝ればいいですか?
厚生労働省の睡眠ガイド2023では、成人は6時間以上が目安です。7時間前後の人で生活習慣病などのリスクがもっとも低いと報告されています。減量中に睡眠を5時間台に削った試験では、脂肪の減りが少なく筋肉などの減りが多かったので、少なくとも6時間を切らないようにしてください。
寝不足の日の食欲はどう抑えればいいですか?
寝不足の日に食欲が強くなるのは、ある程度は体の自然な反応です。我慢するより、たんぱく質を先にとる、甘いものを家に置かない、寝る直前に食べない、といった工夫が現実的です。大きないびきや日中の強い眠気、続く不眠がある場合は、医療機関に相談してください。
この記事は、日吉駅西口から徒歩3分・女性専用の日吉のパーソナルジム CLEAN. が書いています。