体験トレーニングのカウンセリングで、「前に自己流でダイエットをしたとき、生理が止まってしまって」というお話を聞くことがあります。「体重が落ちたのはうれしかったけれど、生理が来なくなって怖くなってやめた」という方も、「少し遅れただけだから大丈夫だと思っていた」という方もいます。
この記事では、ダイエットで生理が乱れたり止まったりするしくみを、研究と専門機関の資料をもとに整理します。先にお伝えしておくと、私たちはトレーニングのジムで、医療機関ではありません。診断や治療のお話はできないので、この記事の役割は「何が起きているのか」と「いつ婦人科に行けばいいのか」を分かりやすくすることです。
先に結論です
- 食事を減らしすぎたり、運動を増やしすぎたりして、体が使えるエネルギーが足りなくなると、脳から卵巣への指令が弱まり、生理が乱れたり止まったりします。これは「やせていなくても」起こります。
- 研究では、運動で使った分を差し引いて体に残るエネルギーが、除脂肪量1kgあたり1日30kcalを下回ったところで、排卵に関わるホルモンの出方が乱れ始めました。ただし個人差が大きく、国際オリンピック委員会(IOC)は「誰にでも当てはまる一本の線」を引くことには慎重です。
- 生理が止まった状態が続くと、女性ホルモンが減り、骨が弱くなりやすくなります。骨をためられる時期は10代から20歳ごろまでで、若い方ほど影響が長く残る可能性があります。
- 生理が3か月以上来ない場合は、婦人科を受診してください。最初に妊娠の可能性が確認されます。3か月たっていなくても、気になるときは早めに相談して構いません。
- 私たちの立場としては、生理が止まるほどのダイエットはおすすめしません。体重が落ちても、体にとっては「足りていない」というサインだからです。
以下、それぞれの根拠を順番に書きます。
「利用可能エネルギー」という考え方
ダイエットと生理の関係を理解するうえで、いちばん大事な言葉が「利用可能エネルギー」です。
日本産科婦人科学会の患者さん向け資料では、「食事からのエネルギー摂取量」から「運動によるエネルギー消費量」を除いたものを「利用可能エネルギー」と説明しています。国立スポーツ科学センター(JISS)のハンドブックでも、同じ式で定義されています。
つまり、食べた量から運動で使った分を引いて、心臓や脳、体温、ホルモンづくり、骨の入れ替えなど、生きていくための仕事に回せる残りのことです。この残りが少ない状態を「利用可能エネルギー不足(Low energy availability)」と呼びます。
ここでのポイントは、「食べる量を減らす」と「運動を増やす」のどちらでも、残りは減るということです。ダイエットでは、この2つを同時にやることが多いので、本人が思っている以上に残りが少なくなっていることがあります。
また、女性アスリートの三主徴に関する国際的な合意文書(2014年)では、体重が変わっていないことを、エネルギーが足りている証拠として使うべきではないとされています。
生理が止まるしくみ
生理は、脳が卵巣に指示を出し、卵巣が卵子を育てて女性ホルモンを出す、という流れで起きています。
日本産科婦人科学会の資料「体重減少性無月経とは」では、体重が十分でないと、脳が妊娠や月経を避けるために、卵巣への指示を休止すると説明されています。その結果、女性ホルモンが減り、生理が止まります。これが「体重減少性無月経」です。資料では、激しい運動やストレスも原因になりうると書かれています。
体の側から見ると、これは「今は妊娠や出産にエネルギーを回す余裕がない」という判断です。体が壊れたわけではなく、守りに入っている状態とも言えます。ただ、その状態が長く続くと、あとで書く骨などへの影響が出てきます。
なお、それまであった生理が3か月以上止まった状態を「続発性無月経」と呼びます(JISSのハンドブック、日本産科婦人科学会学術講演会の教育講演資料による定義)。体重減少性無月経は、その原因のひとつです。原因はほかにもあるので、「ダイエット中に止まったから、原因はダイエット」と自分で決めないことが大切です。
研究の数字:「30kcal」の線
エネルギー不足と生理の関係を、実験で確かめた研究があります。2003年にJournal of Clinical Endocrinology & MetabolismにLoucksとThumaが発表した研究です。
対象は、生理が規則的で、ふだん運動をしていない若い女性29人です。生理周期の前半(卵胞期のはじめ)の5日間、監督下で運動をしてもらいながら、食事を調整して、利用可能エネルギーを次のいずれかにそろえました。単位は「除脂肪量(体重から脂肪を除いた重さ)1kgあたり、1日あたりのkcal」です。
- 45kcal(エネルギーのつり合いがとれた状態)
- 30kcal
- 20kcal
- 10kcal
運動による消費は除脂肪量1kgあたり1日15kcal(最大酸素摂取量の70%の強さ)にそろえています。測ったのは、排卵に関わる黄体形成ホルモン(LH)が、1日の中で何回「波」のように出ているかです。結果は次のとおりでした。
- 30kcal:影響なし
- 20kcal:LHの波の回数が16%減少
- 10kcal:LHの波の回数が39%減少
つまり、ある程度までは体がもちこたえ、30kcalを下回ったあたりから、脳から卵巣への指令が乱れ始めたということです。この乱れは、黄体期(生理周期の後半)がもともと短い女性で、より大きくなっていました。
イメージのために計算してみます。体重55kg・体脂肪率30%の方なら、除脂肪量は約38.5kgです。30kcalの線は約1,150kcal、つり合いのとれた45kcalは約1,730kcalにあたります。これは「食べた量」ではなく、食べた量から運動で使った分を引いた残りです。運動を足せば、その分だけ残りは減ります。
ここは大きく受け取りすぎないでください。理由は3つあります。
- この実験は5日間で、測ったのはホルモンの出方です。生理が実際に止まるまでを見たものではありません。
- 国際オリンピック委員会(IOC)の2023年の合意声明では、30kcalを誰にでも当てはまる線とすることには議論があるとし、個人や性別、体の部位によって差が大きいことから、はっきりした臨床の線を引くことにはリスクがあると書いています。
- 除脂肪量や運動の消費量を、ふだんの生活で正確に測るのは難しいです。
この数字は、「食事を減らしすぎて、さらに運動を足すと、ある時点で体がブレーキを踏む」というしくみを示すものとして読んでください。1日に何kcal食べればいいかの目安として使うものではありません。
アスリートだけの話ではありません
「利用可能エネルギー不足」や「女性アスリートの三主徴」という言葉は、スポーツ医学から広まりました。そのため「運動選手の話でしょう」と思われがちですが、そうとは限りません。
まず、上のLoucksらの実験の対象は、ふだん運動をしていない女性でした。また、日本産科婦人科学会の資料「運動による月経不順」には、体を維持するためのエネルギーが不足すると、「痩せていなくても」女性ホルモンの分泌を促すホルモンが低下し、生理が不順になったり止まったりする、と書かれています。
IOCの2023年の合意声明でも、エネルギー不足は体重を落とそうとして意図的に起きる場合と、運動量が増えたのに食べる量を増やさなかったなど意図せず起きる場合の両方があるとしています。2014年の三主徴の合意文書でも、エネルギー不足は摂食障害の有無にかかわらず起こるものとして扱われています。
ダイエットを始めてから、ジム通いやランニングも始めた。食事は前より控えめにしている。そうした組み合わせは、運動選手でなくても十分に起こりうる状況です。
骨への影響
生理が止まると、いちばん心配なのが骨です。女性ホルモンには、骨を作る働きと壊す働きのバランスを整える役割があるためです(日本産科婦人科学会の資料「将来への影響」)。
JISSのハンドブック(2014年)には、10代の女性アスリート239人について、生理の状態と疲労骨折の関係を調べた結果が載っています。
- 生理周期が正常なグループ:疲労骨折 11%
- 無月経のグループ:疲労骨折 38%
運動量の多いアスリートのデータで、この比較だけで「無月経が原因で骨折が増えた」とまでは言い切れません。それでも、生理が止まっているグループで、疲労骨折がおよそ3倍多かったという差は小さくありません。
もうひとつ大事なのが、骨をためられる時期です。同じハンドブックでは、骨量は20歳ごろにピーク(最大骨量)を迎えるとされ、日本産科婦人科学会の資料でも、骨量を増やせるのは思春期で、その後は横ばい、更年期以降に大きく減ると説明されています。10代から20代前半にダイエットで生理が止まると、この「貯金の時期」を逃してしまうおそれがあります。
回復の見通しについても、正直に書いておきます。2014年の三主徴の合意文書では、エネルギー不足を改善すると、生理は数か月で戻ることもあるが、1年以上かかることもあるとされています。そして骨密度の改善はそれよりゆっくりで、数年かかることが多いとされています。生理が戻ったから終わり、ではないということです。
骨の話は、女性の骨密度は筋トレで上がるのかでもくわしくまとめています。
骨以外に起こりうること
日本産科婦人科学会の資料「体重減少性無月経とは」では、女性ホルモンが少ない状態が続くと、次のようなことが起こる可能性があるとしています。
- 寒がりになる
- 便秘になる
- 髪が抜けやすくなる
- 不妊症になる
- 妊娠しても赤ちゃんが小さくなる
- 骨が弱くなり、骨折しやすくなる
また、資料「妊娠・出産への影響」では、妊娠前にやせていると、早産や低出生体重児、胎児の発育不全などのリスクが高まるとされています。将来、妊娠を考えている方にとっては、ダイエットの数字よりずっと大事な話です。
IOCは、こうしたエネルギー不足による影響の全体を「REDs(スポーツにおける相対的エネルギー不足)」と呼び、生理だけでなく、代謝、骨、免疫、心と体のさまざまな働きに影響が及ぶ状態として定義しています。
減らしすぎのサイン
ここまでの資料から、ダイエット中に「エネルギーが足りていないかもしれない」と考えたほうがよいサインをまとめます。
- 生理の周期が乱れる、遅れる、止まる
- 前より寒がりになった
- 便秘が続く
- 髪が抜けやすくなった
- 運動量を増やしたのに、食べる量はむしろ減らしている
- 食事がとれない、体重のことが頭から離れない
最後の項目について、日本産科婦人科学会の資料は、こうした状態があれば摂食障害(摂食症)の可能性があり、専門的な治療が必要になることもあるので、医師に相談するようすすめています。これは意志の弱さや強さの問題ではありません。ひとりで抱えずに、婦人科や内科、心療内科などに相談してください。
反対に、これらのサインがあっても、原因がエネルギー不足とは限りません。生理の乱れには、ホルモンの病気など、ほかの原因もあります。だからこそ、自己判断ではなく受診が大切です。
受診の目安
いちばん大事なところなので、はっきり書きます。
- 生理が3か月以上来ない場合は、婦人科を受診してください。2014年の三主徴の合意文書でも、3か月以上生理がない場合に評価を始めることができるとされています。
- 最初に、妊娠の可能性が確認されます。同じ合意文書は、無月経の場合はまず妊娠とホルモンの病気を除外する評価が必要としています。ダイエット中だからといって、妊娠の可能性を自分で否定しないでください。
- 3か月たっていなくても、生理の乱れが続いて不安なとき、上のサインがいくつも当てはまるときは、早めに相談して構いません。
- お子さんについては、JISSのハンドブックで15歳になっても初経が来ない場合も受診の目安とされています。
受診のときは、最後に生理が来た日、ここ数か月の体重の変化、食事と運動の量をメモしていくと、状況を伝えやすくなります。
日本産科婦人科学会の資料には、減った体重が戻り、脳が「月経を起こしても大丈夫」と判断すると、しばらくして生理が戻る可能性が高いと書かれています。どう戻していくかは人によって違うので、方針は医師と相談して決めてください。この記事では、治療についての具体的なアドバイスはしません。
ダイエット中に、私たちが気をつけていること
ここからは、医療ではなくトレーニングの立場からの話です。
運動を増やしたら、食事も見直す。利用可能エネルギーは「食べた量 − 運動で使った分」なので、運動を足すときに食事をさらに削ると、残りが二重に減ります。
体重の数字だけで判断しない。上の合意文書にもあるとおり、体重が変わらなくてもエネルギーが足りているとは限りません。生理の周期、寒さ、疲れやすさも、体からの大事な情報です。
生理の記録をつけておく。体重と一緒に生理の日付を残しておくと、「いつから乱れたか」に早く気づけます。生理周期と体重・食欲の関係は、生理前に2〜3kg増えるのかにまとめています。
だるさが抜けない場合は、エネルギー不足のほかに鉄不足が関わっていることもあります。女性の鉄不足とトレーニングもあわせて読んでみてください。1日にどのくらい食べるかの一般的な目安は、女性の1日の摂取カロリーの目安にあります。ただし、生理が止まっている方は、自分で計算して調整する前に、まず受診を優先してください。
参考:日吉のCLEAN.の場合
比較の材料になるよう、当ジムがどうしているかも書いておきます。
CLEAN.は、日吉駅 西口から徒歩3分、女性専用・完全個室のパーソナルジムです。行っているのは、ダンベルやマシンを使う筋トレと、毎日のLINEでの食事指導です。
CLEAN.は医療機関ではないため、生理の乱れを診断したり、治療したりすることはできません。生理が3か月以上来ていない方には、トレーニングを始めるより先に、婦人科の受診をおすすめします。
体験トレーニングでは、最初に姿勢と動きを確認し、目的をうかがいます。過去のダイエットで生理が乱れた経験がある方は、そのときにお伝えください。
料金は月4回コースが42,000円(税込46,200円)、月8回コースが72,000円(税込79,200円)、入会金は30,000円(税込33,000円)です。体験トレーニングは約50分・5,000円(税込5,500円)で、ご入会された場合は無料になります。ウェア・シューズ・タオル・水はすべてお貸しするので、手ぶらで来ていただけます。
まとめ
ダイエットで生理が乱れたり止まったりするのは、食べた量から運動で使った分を引いた「利用可能エネルギー」が足りなくなり、脳が卵巣への指令を休めるためです。やせていなくても起こり、運動選手だけの話でもありません。
実験では、除脂肪量1kgあたり1日30kcalを下回ったところで排卵に関わるホルモンが乱れ始めましたが、個人差は大きく、一律の線ではありません。生理が止まった状態が続くと骨が弱くなりやすく、生理が戻ってからも骨の回復には年単位の時間がかかることがあります。
生理が3か月以上来ない場合は、婦人科を受診してください。最初に妊娠の可能性が確認されます。生理が止まるほど減らすダイエットは、体重の数字がどれだけ落ちていても、うまくいっているとは言えません。
- CLEAN.
出典
Loucks AB, Thuma JR, Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, 2003/Mountjoy M ほか, British Journal of Sports Medicine, 2023(2023 International Olympic Committee's consensus statement on Relative Energy Deficiency in Sport)/De Souza MJ ほか, British Journal of Sports Medicine, 2014(2014 Female Athlete Triad Coalition Consensus Statement on Treatment and Return to Play of the Female Athlete Triad)/日本産科婦人科学会 女性ヘルスケア委員会「体重減少性無月経とは」「運動による月経不順」「妊娠・出産への影響」「将来への影響」(患者説明用資料, 2024年)/小野政徳「続発性無月経の診断と治療」第70回日本産科婦人科学会学術講演会 専攻医教育プログラム/国立スポーツ科学センター「成長期女性アスリート 指導者のためのハンドブック」2014年
ダイエット中の食事と運動のバランスは、目的と今の体の状態で変わります。まずは体験トレーニング(約50分)で、一緒に確認しましょう。→ 体験トレーニングの流れを見る
あわせて読みたい
よくある質問
ダイエット中に生理が1回遅れただけでも、受診したほうがいいですか?
1回の遅れは、ストレスなどほかの理由でも起こります。まず妊娠の可能性がある場合は、それを確認してください。そのうえで、生理が3か月以上来ない場合は婦人科を受診してください。3か月たっていなくても、乱れが続いて不安なときや、寒がり・便秘・抜け毛などが重なっているときは、早めに相談して構いません。
やせていないのに、ダイエットで生理が止まることはありますか?
あります。日本産科婦人科学会の資料では、体を維持するためのエネルギーが不足すると、やせていなくても女性ホルモンの分泌を促すホルモンが低下し、生理が不順になったり止まったりすると説明されています。大事なのは体重そのものより、食べた量から運動で使った分を引いた「利用可能エネルギー」が足りているかどうかです。
生理が止まっている間も、筋トレを続けていいですか?
自己判断はせず、まず婦人科で原因を確認し、運動をどうするかは医師に相談してください。運動を足すとそのぶん利用可能エネルギーは減りますし、生理が止まっている間は骨が弱くなっている可能性もあります。医師の判断を優先したうえで、トレーニングの内容を決めるのが安全です。
この記事は、日吉駅西口から徒歩3分・女性専用の日吉のパーソナルジム CLEAN. が書いています。