体験トレーニングにお越しになる方から、「週2回ジムに通っているのに、なかなか体重が落ちない」「在宅勤務になってから太った」という相談を受けることがあります。話をうかがうと、運動の時間はしっかりあるのに、それ以外の時間はほとんど座っている、という方が少なくありません。
この記事では、運動以外の日常の活動で使うエネルギー「NEAT(ニート)」について、研究の数字と厚生労働省のガイドをもとに整理します。はっきりしていることと、まだはっきりしていないことは分けて書きます。
先に結論です
- NEATは、運動以外の日常の活動(歩く、立つ、家事、通勤、そわそわ体を動かすこと)で使うエネルギーです。
- レビューでは、NEATはとても座りがちな人で1日の消費エネルギーの約15%、活動的な人では50%以上とされています。多くの人にとって、運動そのものより大きな部分です。
- 食べすぎの実験では、NEATが増えた人ほど脂肪がつきにくく、脂肪の増え方には人によって約10倍の差がありました。
- やせ型の人と軽い肥満の人を比べた研究では、肥満の人のほうが1日約2時間長く座っていました。同じように動けば、1日約350kcal多く使える可能性がある、と推計されています。
- 食事を減らすと、知らないうちに日常の活動が減ることがあります。運動を始めたあとに減る人もいますが、減らない人のほうが多いという報告もあります。
- 厚生労働省のガイドは、座りっぱなしの時間が長くなりすぎないよう注意し、例えば30分ごとに中断することの大切さを紹介しています。
以下、それぞれの根拠を順番に書きます。
1日の消費カロリーは、4つに分けられます
1日に使うエネルギーは、大きく次の4つに分けて考えられています。NEATの研究で知られる、アメリカのメイヨー・クリニックのLevine医師のレビュー(2003年、Proceedings of the Nutrition Society)から、目安をまとめます。
| 中身 | どんなものか | 1日の消費に占める割合の目安 |
|---|---|---|
| 基礎代謝 | 寝ていても使う、生きるためのエネルギー | 座り仕事の人で約60% |
| 食事による熱産生 | 食べたものを消化・吸収するときのエネルギー | 約10〜15% |
| 運動 | ジムやスポーツなど、意識して行う運動 | 先進国の多くの人では、ほぼゼロか、ごくわずか |
| NEAT | 歩く、立つ、家事、通勤、そわそわ動くなど | とても座りがちな人で約15%、活動的な人で50%以上 |
このレビューでは、先進国の多くの人にとって運動で使うエネルギーは「ほぼゼロ」で、体を動かして使うエネルギーの大部分はNEATだと書かれています。週に1〜2時間運動していても、残りの100時間以上の起きている時間をどう過ごすかで、合計は大きく変わる、ということです。
立つ、そわそわする、歩く。それぞれどのくらい違うのか
Levine医師らは、日常の動きでエネルギーがどれだけ増えるかも測っています(2000年、American Journal of Clinical Nutrition)。対象は24人(女性17人、男性7人)です。横になって安静にしているときと比べた増え方は、次のとおりでした。
- じっと座っている:4%
- 座ったまま、そわそわ体を動かす:54%
- じっと立っている:13%
- 立ったまま、そわそわ体を動かす:94%
- 時速1.6kmでゆっくり歩く:154%
- 時速3.2kmで歩く:202%
ここから分かるのは、ただ立っているだけでは、増え方は小さいということです。一方で、ゆっくりでも歩くと、エネルギーの使い方ははっきり増えます。スタンディングデスクを使うなら、立ったまま動く、こまめに歩く、まで組み合わせるほうが、消費の面では意味が大きいと考えられます。
食べすぎても太りにくい人は、何が違ったのか
NEATが注目されたきっかけは、1999年にScienceに載った実験です。
肥満ではない16人に、体重を保つのに必要な量より1日1000kcal多く、8週間食べてもらいました。全員が同じだけ食べすぎたのに、体に脂肪としてたまった量には約10倍の差が出ました。
- 食べすぎで増えた1日の消費エネルギーのうち、約3分の2はNEATの増加によるものでした。
- NEATが大きく増えた人ほど、脂肪が増えにくい関係がありました(相関係数0.77)。
同じ著者の2003年のレビューでは、1日1000kcal食べすぎた人のなかに、NEATが1日600kcal以上増えた人がいたと書かれています。運動を指示されたわけではなく、立つ、歩く、姿勢を保つ、そわそわ動くといった日常の動きが、自然に増えていたということです。
ただし、これは16人の短い実験です。「NEATを増やせば必ず太らない」とまでは言えません。体重の変わりやすさに、運動以外の活動が大きく関わっている、という一つの根拠として受け取ってください。
座っている時間が1日約2時間違った研究
2005年には、同じグループがScienceに次の研究を発表しています。運動の習慣がないやせ型10人と軽い肥満の10人に、姿勢と動きを細かく記録するセンサーをつけてもらい、10日間の過ごし方を調べました。
- 肥満の人たちは、やせ型の人たちより1日約2時間長く座っていました。
- 著者たちは、肥満の人がやせ型の人と同じように動けば、1日約350kcal多く使える可能性があると推計しています。
- 肥満の人が減量しても、やせ型の人が体重を増やしても、座っている時間の長さはほとんど変わりませんでした。
350kcalは、実際に測った差ではなく、計算による見積もりです。また、20人という小さな研究で、「座っているから太った」のか「太っているから座りがちなのか」は、この研究だけでは決められません。それでも、運動の習慣がない人どうしでも、日常の動き方で消費に大きな差が出うることを示した研究です。
食事制限や運動のあと、日常の動きは減るのか
NEATは、本人が気づかないうちに増えたり減ったりします。2002年のLevine医師のレビューでも、NEATは食べすぎると増え、食べる量が足りないと減るとまとめられています。
食事制限で、活動量が減った研究
太り気味の成人48人を対象に、6か月間カロリー制限を行った試験があります(2009年、PLoS ONE)。食事だけで減らしたグループでは、3か月の時点で、体を動かして使うエネルギーにあたる部分が1日約420kcal減っていました。体が省エネになる「代謝適応」に加えて、日常の動きも減っていたということです。一方、食事を減らす量を半分にして運動を組み合わせたグループでは、活動量の低下も代謝適応も見られませんでした。
食事を減らしているときに、なんとなく体がだるく、動くのがおっくうになる。これは気持ちの問題だけではなく、体の反応として起こりうることです。停滞期の仕組みはダイエットの停滞期はなぜ来るのかで書いています。
運動を始めたあとは、人によります
56〜78歳の健康な11人が持久系のトレーニングを行った研究(1992年、American Journal of Physiology)では、トレーニング以外の時間に体を動かして使うエネルギーが62%減り、1日の総消費量は増えませんでした。運動した分、ほかの時間に動かなくなっていた、ということです。
ただ、これがいつも起こるわけではありません。31本の研究を集めたレビュー(2014年、Clinical Obesity)では、ランダム化試験7本のすべてで、運動以外の活動は減っていませんでした。著者たちは、運動で日常の活動が減るという説を支える証拠は少ない、としています。
まとめると、「運動したから、今日はもう動かなくていい」となる人もいれば、ならない人もいます。自分がどちらなのかは、歩数などで確かめるのが確実です。運動しているのに痩せない理由は運動しているのに痩せないのはなぜかもあわせてどうぞ。
座りすぎと健康。厚生労働省のガイドでは
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、成人に対して次のように書かれています。
- 座ったり寝ころんだりした状態で、エネルギー消費が1.5メッツ以下の、起きているあいだの行動を「座位行動」と呼びます。デスクワークや、座ってスマートフォンを見ることも含まれます。
- 推奨として、「座位行動(座りっぱなし)の時間が長くなりすぎないように注意する」とされています。
- 34本のコホート研究をまとめた解析で、座っている時間が長いほど死亡リスクが高くなることが紹介されています。
- 長く座り続けるのをできるだけ頻繁に(例えば30分ごとに)中断することが、食後の血糖値や中性脂肪などのリスクを下げるのに大切だという報告も紹介されています。
- 平成25年の国民健康・栄養調査では、平日に1日8時間以上座っていると答えた人は、男性で38%、女性で33%でした。
同じガイドでは、歩行かそれと同じくらいの身体活動を1日60分以上(1日約8,000歩以上が目安)、筋トレを週2〜3日行うこともすすめられています。歩数の目安は1日何歩歩けばいい?でくわしく書いています。
デスクワークの女性が、無理なくNEATを増やす方法
ここまでの研究から考えると、ポイントは「長く座り続けない」「少しでも歩く」です。特別な時間を取らなくてもできることを挙げます。
- 30分〜1時間に一度は立ち上がる。飲み物を取りに行く、資料を印刷しに行くなど、用事をまとめずに分けるのも一つの方法です。
- 電話やオンライン会議の一部を、立って行う。立つだけでは増え方は小さいので、できれば少し歩きながら。
- 階段を使う階を決めておく。「2階分までは階段」など、迷わないルールにすると続けやすくなります。
- 昼休みや、帰り道の一駅分を歩く。まとまった運動の時間でなくても、歩く時間は積み重ねで効いてきます。
- 食事を減らしているときほど、歩数を見る。知らないうちに動かなくなっていないか、数字で確かめます。
座り続けて固まりやすいお尻まわりのケアについては、デスクワークで固まった下半身にで紹介しています。
参考:日吉のCLEAN.の場合
比較の材料になるよう、当ジムがどうしているかも書いておきます。
CLEAN.は、日吉駅 西口から徒歩3分、女性専用・完全個室のパーソナルジムです。行っているのは、ダンベルやマシンを使う筋トレと、毎日のLINEでの食事指導です。週に1〜2回のトレーニングだけで、1日の消費カロリーが大きく変わるわけではありません。そのため、トレーニング以外の日の過ごし方や、歩数の変化もうかがうようにしています。
食事を減らしている時期に、日常の動きが落ちていないかを一緒に確認することもあります。運動の時間を増やすより、座っている時間を少し減らすほうが続けやすい方も多いと感じています。
まとめ
NEATは、運動以外の日常の活動で使うエネルギーです。運動の習慣がない人では、体を動かして使うエネルギーの大部分を占め、人によって大きな差があります。食べすぎの実験では、NEATが増えた人ほど脂肪がつきにくく、座っている時間が1日約2時間違うという研究もあります。
食事を減らすと、知らないうちに日常の動きが減ることがあります。運動を始めたあとに減る人もいますが、全員ではありません。厚生労働省のガイドも、座りっぱなしの時間が長くなりすぎないよう注意することをすすめています。
ジムでの運動に加えて、座り続けない、少しでも歩く。この小さな積み重ねが、1日の消費カロリーを支えています。
- CLEAN.
参考文献
Levine JA, Proceedings of the Nutrition Society, 2003/Levine JA, Schleusner SJ, Jensen MD, American Journal of Clinical Nutrition, 2000/Levine JA, Eberhardt NL, Jensen MD, Science, 1999/Levine JA ほか, Science, 2005/Levine JA, Best Practice & Research Clinical Endocrinology & Metabolism, 2002/Redman LM ほか, PLoS ONE, 2009/Goran MI, Poehlman ET, American Journal of Physiology, 1992/Washburn RA ほか, Clinical Obesity, 2014/厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」
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よくある質問
NEATとは何ですか?
運動以外の日常の活動で使うエネルギーのことです。歩く、立つ、家事、通勤、座ったまま体をそわそわ動かすことなどが含まれます。Levineのレビューでは、とても座りがちな人で1日の消費エネルギーの約15%、活動的な人では50%以上とされています。
座りっぱなしだと太りますか?
座る時間だけで体重が決まるわけではありません。ただ、やせ型の人と軽い肥満の人を10日間調べた研究では、肥満の人のほうが1日約2時間長く座っていて、やせ型の人と同じように動けば1日約350kcal多く使える可能性があると推計されました。厚生労働省のガイドも、座りっぱなしの時間が長くなりすぎないよう注意することをすすめています。
ジムで運動すると、ほかの時間に動かなくなりますか?
そうなる人もいますが、全員ではありません。高齢者11人の研究では、持久系のトレーニング中に運動以外の活動で使うエネルギーが62%減り、1日の総消費量は増えませんでした。一方、31本の研究を集めたレビューでは、ランダム化試験7本のすべてで、運動以外の活動は減っていませんでした。
この記事は、日吉駅西口から徒歩3分・女性専用の日吉のパーソナルジム CLEAN. が書いています。