体験トレーニングにお越しになる方から、「筋肉が1kg増えると、基礎代謝が50kcal上がるって本当ですか?」と聞かれることがよくあります。「筋トレで基礎代謝を上げて、食べても太らない体に」という言葉も、雑誌やSNSでよく見かけます。
この記事では、筋肉と基礎代謝の関係を、臓器ごとの代謝を測った研究と厚生労働省の資料をもとに整理します。筋トレのジムとしては少し言いにくい結果も出てきますが、そのまま書きます。
先に結論です
- 安静時に骨格筋1kgが使うエネルギーは1日約13kcalです。脂肪組織は約4.5kcalで、肝臓・脳・心臓・腎臓は1kgあたりでその15〜30倍以上を使っています。
- そのため、「筋肉1kgで基礎代謝が50kcal上がる」は、測定された数字と合いません。増えるのは13kcal前後です。
- 筋トレで増える除脂肪量は、女性の試験で半年でおよそ1〜2kgでした。
- 筋トレで安静時の代謝が増えたという研究はありますが、女性では有意に増えなかった試験もあり、結果は一定していません。
- 日本人女性の基礎代謝量の目安は、厚生労働省の基準で1日およそ1,010〜1,160kcalです。
- それでも筋トレをすすめるのは、減量中に筋肉を守れることと、糖尿病などのリスクが低いことが分かっているからです。
以下、それぞれの根拠を順番に書きます。
基礎代謝は、どこで使われているのか
基礎代謝は、体を動かさずに安静にしていても、生きていくために使われるエネルギーです。公益財団法人長寿科学振興財団の解説では、1日に使うエネルギーのうち約60%が基礎代謝、約30%が生活の中の活動、約10%が食事をしたときの熱とされています。
同じ解説には、厚生労働省 e-ヘルスネットから引用した、安静時の代謝を臓器ごとに分けた割合が載っています。骨格筋22%、肝臓21%、脳20%、心臓9%、腎臓8%、脂肪組織4%、その他16%です。
骨格筋がいちばん大きく見えますが、これは筋肉が1kgあたりでたくさん燃えているからではありません。体の中に筋肉の量が多いからです。肝臓や脳は、ずっと軽いのに、筋肉と同じくらいのエネルギーを使っています。
臓器1kgあたりで比べると、筋肉は控えめです
臓器ごとの1kgあたりの代謝量は、イギリスの研究者Eliaが1992年にまとめた値がよく使われています。この値が本当に合っているかを確かめた研究があります(2010年、American Journal of Clinical Nutrition)。ドイツの健康な成人131人(男性67人、女性64人、21〜73歳)で、MRIで臓器の重さを測り、安静時の代謝量を実測して比べたものです。
| 臓器・組織 | 1kgあたりの安静時代謝量(kcal/日) |
|---|---|
| 心臓 | 440 |
| 腎臓 | 440 |
| 脳 | 240 |
| 肝臓 | 200 |
| 骨格筋 | 13 |
| その他の組織 | 12 |
| 脂肪組織 | 4.5 |
結果は、若い人と中年の人では、Eliaの値でほぼ説明できるというものでした。50歳を超えるグループでは、実測値がこの値から計算した量より1日約50kcal少なく、1kgあたりの値が3%ほど低めでした。年齢とともに、同じ臓器でも少し燃え方が落ちる可能性があります。
「筋肉1kgで50kcal」は、研究の数字と合いません
表のとおり、骨格筋が安静時に使うのは1kgあたり1日約13kcalです。筑波大学の田中喜代次氏・中田由夫氏が日本体力医学会の学会誌「体力科学」に書いた解説(2017年)でも、筋肉が1kg増えても基礎代謝は1日13kcalしか増えないとされています。著者たちは、これは脂肪が3kg減ったときに下がる基礎代謝とほぼ同じ量だ、とも書いています。
私たちが調べた範囲では、「1kgで50kcal」を裏づける測定データは見つかりませんでした。13kcalは、30〜49歳の女性の基礎代謝量の目安(1日約1,160kcal、後述)の約1%です。
同じ解説では、「減量しながら筋肉と基礎代謝を増やす」という考え方そのものが神話に近い、とも指摘されています。減量すると、基礎代謝はふつう下がります。体重が落ちにくくなる仕組みは、ダイエットの停滞期はなぜ来るのか。代謝適応でくわしく書いています。
女性は、数か月でどのくらい筋肉が増えるのか
アメリカで、全身の筋トレを週3日・24週間行った試験があります(2001年、Medicine and Science in Sports and Exercise)。参加者は20〜30歳と65〜75歳の男女40人です。女性の除脂肪量(脂肪以外の重さ)は次のように増えました。
- 20〜30歳の女性(9人):42.9kg → 44.8kg、約1.9kg増
- 65〜75歳の女性(10人):41.1kg → 42.0kg、約0.9kg増
50歳以上の男女1,328人、49件の研究をまとめたメタ解析(2011年、Medicine and Science in Sports and Exercise)でも、筋トレによる除脂肪量の増加は平均1.1kgでした。
また、男女の筋トレの効果を比べたメタ解析(2020年、Journal of Strength and Conditioning Research)では、筋肉の大きくなり方を割合で見ると、男女で有意な差はありませんでした。女性も、もともとの量に対しては男性と同じように筋肉がつきます。
除脂肪量には、筋肉以外の水分などもふくまれます。仮に24週間で増えた1.9kgがすべて筋肉だったとしても、基礎代謝の増加は計算上1日約25kcalです。筋トレの効果が見た目や数字に出てくる時期については、筋トレの効果はいつから?にまとめています。
筋トレで、安静時の代謝は実際に増えるのか
上の2001年の試験では、筋トレの前後で安静時代謝量も測っています。
- 男性:9%増えました(統計的に有意)。
- 女性:1日約47kcal(約4%)増えましたが、統計的に有意な増加ではありませんでした。
著者たちは、筋トレへの安静時代謝の反応は、年齢ではなく性別で違うとまとめています。トレーニング以外の日常の活動量は変わっていませんでした。
一方、18件の研究をまとめたメタ解析(2020年、Journal of Sports Sciences)では、筋トレをしたグループは、しなかったグループより安静時代謝量が1日平均約96kcal多くなっていました。有酸素運動では有意な差はなく、有酸素運動と筋トレの組み合わせでも有意ではありませんでした。ただし著者たちは、研究ごとの方法がばらばらで、偏りのリスクが高い研究が多いことも書いています。
96kcalは、筋肉が1〜2kg増えた分だけでは説明しにくい大きさです。筋トレで安静時代謝が増える可能性はあるものの、その大きさはまだ幅をもって見る必要があります。
日本人女性の基礎代謝量の目安
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、基礎代謝量を体重1kgあたりの基礎代謝基準値 × 参照体重で求めています。女性の値は次のとおりです。
| 年齢 | 基礎代謝基準値(kcal/kg/日) | 参照体重(kg) | 基礎代謝量(kcal/日) |
|---|---|---|---|
| 18〜29歳 | 22.1 | 50.3 | 1,110 |
| 30〜49歳 | 21.9 | 53.0 | 1,160 |
| 50〜64歳 | 20.7 | 53.8 | 1,110 |
| 65〜74歳 | 20.7 | 52.1 | 1,080 |
| 75歳以上 | 20.7 | 48.8 | 1,010 |
2025年版でも、同じく基準値に参照体重をかけて求める形になっていて、参照体重は少し見直されています(たとえば30〜49歳の女性は53.3kg)。
体重1kgあたりの値は、年齢とともに少しずつ下がります。40代、50代で体型が変わる理由は、40代50代の体型が変わる理由。体重ではなく中身で書いています。
それでも筋トレをすすめる理由
ここまで読むと、「基礎代謝がそれほど上がらないなら、筋トレの意味はないのでは」と思うかもしれません。私たちが筋トレをすすめる理由は、基礎代謝の数字ではなく、次の2つです。
1つ目は、減量中に筋肉を守れることです。肥満のある中高年(平均年齢57〜68歳)を対象にした6件のランダム化比較試験をまとめたメタ解析(2018年、Nutrients)では、食事制限だけのグループは除脂肪量が平均0.76kg減ったのに対し、筋トレを組み合わせたグループはほとんど減りませんでした(+0.05kg)。脂肪の減り方は、どちらもほぼ同じ(−3.86kgと−3.73kg)でした。
2つ目は、病気のリスクが低いことです。日本の研究者が16件の追跡調査をまとめたメタ解析(2022年、British Journal of Sports Medicine)では、筋トレをしている人は、していない人に比べて、総死亡、心血管疾患、がん、糖尿病などのリスクが10〜17%低いという結果でした。有酸素運動の量とは関係なく見られた差です。総死亡などでは週30〜60分ほどでリスクがいちばん低く、糖尿病では週60分まで大きくリスクが下がっていました。厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」でも、筋トレを週2〜3日行うことが勧められています。
もうひとつ、1日に使うエネルギーのうち約30%は生活の中の活動です。基礎代謝を数十kcal上げることより、歩く量や動く量のほうが、自分で増やしやすい部分です。
参考:日吉のCLEAN.の場合
比較の材料になるよう、当ジムがどうしているかも書いておきます。
CLEAN.は、日吉駅西口から徒歩3分、女性専用・完全個室のパーソナルジムです。行っているのは、ダンベルやマシンを使う筋トレと、毎日のLINEでの食事指導です。「筋トレで基礎代謝が大きく上がって痩せる」という説明はしていません。減量中に筋肉を落とさないこと、筋力をつけること、食事と日々の活動量を整えることを、目的に合わせて組み合わせます。
体験トレーニングでは、最初に姿勢と動きを確認し、目的をうかがいます。持病のある方や治療中の方は、主治医の判断を優先してください。
まとめ
骨格筋が安静時に使うエネルギーは1kgあたり1日約13kcalで、「筋肉1kgで基礎代謝50kcal」は研究の数字と合いません。女性が筋トレで増やせる除脂肪量は半年でおよそ1〜2kgで、基礎代謝への上乗せは数十kcal程度です。筋トレで安静時代謝が増えるかどうかは、研究によって結果が分かれています。
それでも、減量中に筋肉を守ること、糖尿病などのリスクが低いことは、研究で示されています。基礎代謝を上げるためではなく、筋肉を落とさないため、健康のために、週2〜3日の筋トレを続ける。これが研究から言える、筋トレと基礎代謝の付き合い方です。
- CLEAN.
参考文献
Elia M, "Organ and tissue contribution to metabolic rate", Energy Metabolism: Tissue Determinants and Cellular Corollaries, Raven Press, 1992/Wang Z ほか, American Journal of Clinical Nutrition, 2010/田中喜代次・中田由夫「減量しながら筋肉量および基礎代謝量を高めることは可能か?」体力科学, 2017/Lemmer JT ほか, Medicine and Science in Sports and Exercise, 2001/Peterson MD, Sen A, Gordon PM, Medicine and Science in Sports and Exercise, 2011/Roberts BM, Nuckols G, Krieger JW, Journal of Strength and Conditioning Research, 2020/MacKenzie-Shalders K ほか, Journal of Sports Sciences, 2020/Sardeli AV ほか, Nutrients, 2018/Momma H, Kawakami R, Honda T, Sawada SS, British Journal of Sports Medicine, 2022/厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書/厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」筋力トレーニングについて/公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット「エネルギー消費量の測定方法」
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よくある質問
筋肉が1kg増えると、基礎代謝はどれくらい上がりますか?
臓器ごとの代謝を調べた研究では、骨格筋が安静時に使うエネルギーは1kgあたり1日約13kcalです。「50kcal上がる」という数字は、この測定値と合いません。30〜49歳の女性の基礎代謝量の目安は1日約1,160kcalなので、筋肉1kgで増えるのはその1%ほどです。
女性でも、筋トレをすると基礎代謝は上がりますか?
結果は一定していません。24週間の筋トレ試験では、男性は安静時代謝量が9%増えましたが、女性では有意な増加は見られませんでした。18件の研究をまとめたメタ解析では1日平均約96kcal増えていましたが、研究ごとの方法がばらばらで、幅をもって見る必要があります。
基礎代謝が大きく上がらないなら、筋トレをする意味はありますか?
あります。6件の試験をまとめたメタ解析では、食事制限だけの減量で除脂肪量が平均0.76kg減ったのに対し、筋トレを組み合わせるとほとんど減りませんでした。また、筋トレをしている人は、総死亡や糖尿病などのリスクが10〜17%低いという解析もあります。厚生労働省のガイドでも、筋トレを週2〜3日行うことが勧められています。
この記事は、日吉駅西口から徒歩3分・女性専用の日吉のパーソナルジム CLEAN. が書いています。